大人が絵を描きたいと思ったらどうすればいい?

ふと「絵を描いてみたい」と思ったことはありませんか?

日常の中で感じた美しい景色や、頭の中に浮かんだアイデアを形にしたいと思っても、「どこから始めればいいのか分からない」と悩んでしまうこともあるでしょう。そんなあなたに、今回は大人が絵を描きたいと思ったときに取るべき第一歩をご紹介します。

大人になってからの新しい挑戦は、ちょっとした工夫や行動がモチベーションを大きく高めてくれます。「描いてみたい」と思ったその気持ちを大切に、ぜひ始めてみてください!

お気に入りの画材を見つけよう

ステップ1:お気に入りの画材を見つけよう

絵を描くためには画材が必要です。家にある鉛筆やボールペンで始めるのも良いですが、画材を新しく揃えることで「描きたい!」という気持ちがさらに高まります。

最初におすすめなのは、文具店や画材店に足を運ぶことです。店内にはさまざまな種類の画材が揃っていて、見るだけでも創作意欲が湧いてきます。一言で”色鉛筆”といっても、発色の良い外国製のものや、水彩色鉛筆といった種類もあります。新しい道具に触れると、心がワクワクして「これで描いてみたい!」という気持ちが膨らむでしょう。

初心者におすすめの画材

  • 色鉛筆や水彩色鉛筆:扱いやすく、色を塗るだけで楽しい。
  • スケッチブック:自由に描けるお気に入りのサイズを選びましょう。
  • 水彩絵の具:絵を描くのが楽しくなる鮮やかな色が魅力。

大人になると「続けられるか分からない」「自分には向いていないかも」と思って迷うこともありますが、まずはお気に入りの画材を一つ手に入れてみてください。それがあなたの新しい趣味への第一歩となるはずです。

ステップ2:自由に描いてみよう

画材を手に入れたら、次は「描く」ことを楽しみましょう。

「何から描き始めたらいいんだろう?」「下書きは必要?」と考えすぎてしまうと、せっかくのやる気が失われてしまいます。まずは自由に手を動かして、好きなものを好きなように描いてみてください。

大切なのは、描き切ることです。たとえ「ちょっと変だな」と思っても途中でやめずに最後まで仕上げることで、達成感が得られます。


初めての1枚で得られる3つのこと

達成感を味わう 1枚の絵を描き上げること自体が、大人にとってはとても充実した体験になります。

画材に慣れる “色鉛筆の芯がこんなに柔らかかったんだ”、“水彩絵の具の水加減はこうするのか”…。触れてみることで、道具の使い方に自然と慣れていきます。

自分の特徴を知る 完成した絵を見ると、自分の得意な部分や苦手な部分が見えてきます。“形をとるのが難しい”、“意外と色の塗り方が上手い”など、意外な発見があるかもしれません。

最初の一枚を描き切る目的は2つあります。

一つ目は、画材に慣れることです。久しぶりに画材に触れてみると、昔感じた感触と違うことに気がつきます。
「色鉛筆の芯はこんなにやわらかかった? 」「水彩絵の具に混ぜる水の量はどれくらいだったかしら」と、わかっているつもりだったことに悩むでしょう。

そして2つ目の目的は、自分の得手不得手を知ることです。
1枚の絵を描き切ってみると、自分の絵の特徴がわかります。
色が薄かったり、形がとれていなかったり、大きく描くことができないこともあります。
逆に、思っていたよりも気に入った作品になり、もっと描きたいと思うことも多いのです。

そして、なによりも1枚の作品を描き上げた達成感を味わうことができます。
大人にとって「1枚の絵を描き上げること」は意外と大変なことです。

思うように描けないときには模写に挑戦

実は「好きなように描いていいですよ」と言われても描けない大人はたくさんいます。
子どものころとは違い、大人になると素晴らしい作品をたくさん知っているため「好きなように」はとてもハードルが高い言葉なのです。

真っ白い画用紙を前にしても手が動かないときには、模写に挑戦してみましょう。
模写とは、お手本をみながら真似して描いてみることです。写し絵とは違います。
写し絵は、お手本の上に白い紙を重ねてなぞることですが、模写は「見ながら」描きます。
写し絵よりも自分で描いている感覚があるでしょう。

有名な画家たちも、模写をたくさんしています。
ゴッホは、日本の浮世絵を好んで描いていました。
ゴッホはミレーの「種まく人」も描いています。

模写をした作品には、ゴッホらしさがあふれていて、日本の浮世絵やミレーの作品とは一味違ったゴッホの作品に仕上がっています。
模写は、見本を真似て描くことですが、実際に描いてみると個性があらわれるものです。

「絵を描きたいのに描けない」というときには、ぜひ好きな絵を模写することから始めてみてください。
描き終えたときには、きっと達成感とともに少しの自信がついているでしょう。

何を描いたらいいのかわからないとき

「模写する絵がない」「なにを模写したらいいかわからない」というときには、絵の知識を持っている人の力を借りるといいかもしれません。
「描きたい」という気持ちはあっても、知識や材料がなければ形にすることはできないからです。

絵画教室には、絵の知識と経験をもった先生やプロの講師がたくさんいます。
その人その人のレベルにあった課題やモチーフを提案して、オーダーメイド感覚で絵を描きたい気持ちに答えます。

実は、絵のモチーフの選び方にはコツがあります。
大人が「絵を描きたい」と思ったとき、最初に選びやすいモチーフが「花」です。
しかし「花」は、とても難しいのです。

植物は、形が不規則で、細かい奥行きと大きな奥行きが入り乱れています。
色も繊細な違いを表現する必要があり、ガラスの花瓶にいけてあれば透明感と水の質感、光の屈折まで描き分ける高度な技術が必要です。
勢いよく花を描き始めても、思うように描けずあきらめてしまう人も多いです。

絵画教室では、スキルに応じたモチーフを用意します。
最初はレンガや球体のように描きやすいものから始まり、徐々にリンゴや壺のように質感あるものを描きます。

「描きたい」という気持ちをゼロから生み出すことは難しいですが、「描きたい」と思っている人もスキルを引き出すことは、絵画教室でできます。

おわりに

大人になってから新しいことを始めるときには、つい損得を考えてしまいます。
絵を描くことは、お金を生み出すことはできませんが、心にゆとりを与えてくれます。

お金では買えない自分だけの作品を描いてみてはいかがでしょうか。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

関連記事

関連記事