聞きにくい質問「絵画教室に通っている子どもはどんな子が多いですか」

子どもが習い事を始めるとき、教室の雰囲気だけでなく、通っている子どもたちの様子も気になります。
しかし、先生に「どんな子どもが多いですか」とは、なかなか聞きにくいものです。
とくに「絵画教室は個性が強い子が多いのでは」と心配している人も多いようです。

今回は「絵画教室に通っている子どもはどんな子どもたちが多いのか」をお話しします。

とにかく絵が好きな子

絵画教室に通っている子どもは、お友達と一緒に絵画教室に通い始めたのではなく、
ひとりで始めることが多いようです。

例えば、サッカーは同じ小学校に通う仲間と同じチームに入る傾向があります。
学習塾には「お友達紹介キャンペーン」を実施しているところも多く、友達同士で入塾する子どももたくさんいます。
しかし、絵画教室は「誰かと一緒だから」という理由ではなく
「絵が好きだから」という理由で通い始める子どもが多いのです。

絵画教室には、とにかく絵が好きで絵を描く場所を求めている子どもがいます。

自分のペースを保つことで成長できる子

サッカーや野球はチームワークが大切です。
周囲と足並みをそろえることが求められるのかもしれません。

一方、マイペースな子どもは、自分のスピードで理解し、一つ一つをかみ砕きながら成長します。
しかし、そのような子どもは、素晴らしい芽があったとしても、ペースを乱されると良さが発揮できず
「どんくさい」と思われてしまうことがあるのです。
筆者もかなりマイペースな子どもでした。
本人はじっくりと考えているのですが、周囲の大人からみれば「反応が鈍い子」に見えていたようです。

絵画を好んで習う子どもは、感性が豊かです。
何かを見たときに自分の感性で自分のスピードで解釈します。
絵画教室は、足並みをそろえることよりも個を大切にする雰囲気があります。
自分のペースを持っている子どもは、他人のペースを乱すこともしません。
自分の感性を大切にし、他の人の感性も認められる子どもが絵画教室には集まります。

美術系学校への進学を考えている子

絵画教室には、すでに進路を見据えている子どももいます。
高校には、美術の専門課程がある学校もあります。
入学試験には、デッサンや平面構成などの実技試験もあるため、小学校や中学校に通いながら絵の勉強を始めます。

ただ、はじめから美術系学校への進学を希望して絵画教室に入会する子どもは少ないのかもしれません。
はじめは「絵を描いてみたい」「絵が好き」という思いで入会し、
先生との出会いや絵の楽しさを知ることで美術系学校への進学を考え始めるようです。

絵画教室は、新しい視点や世界観の入り口にもなります。

絵画教室に通っている子どもの共通点

絵画教室には、さまざまな個性をもった子どもが通っています。
他の習い事と違い、年齢も幅広いです。

ここからは、筆者が経験から感じた「年齢や個性は違っても、絵画教室に通っている子どもに共通している点」をお話しします。

<豊かな感性をもっている>

数ある習い事の中から絵画教室を選ぶ子どもは、豊かな感性があります。
体を動かすことが好きな子はサッカーや野球、勉強に力を入れたい子は塾や英会話を選びます。
絵画教室を選ぶ子は「なにかを作りたい」「描きたい」という本人の思いがあり、
作ることや描くことに魅力を感じる感性をもっているのではないでしょうか。

<他人の個性を見下さない>

絵画教室に通っている子どもは、誰かと競争して勝つというよりも「オンリーワン」になることを求めています。
サッカーや野球のようにチームワークが必要な習い事は、競争することで成長する面があります。

一方、絵画教室には「他人より優位に立つ」という意識は必要ありません。
レギュラーも補欠もなく、全員がレギュラーです。
そのため、他人の個性や作品を見下しません。
人の作品と比べたり批判したりする場合は、自分の作品に自信がもてていないからでしょう。

作品は、自分が納得できることが大切です。
絵画教室に通っている子は、自分の個性を大切にして、相手の個性も否定しない「大人な子」が多いのかもしれません。

<子どもの内面を大切にする大人がそばにいる>

筆者は絵画教室に通っている子は恵まれている環境にいるのだと考えます。
なぜならば、絵画教室は進学や収入に直結する習い事ではないからです。
書道や茶道のように級や段があって、いずれ師範の免許がもらえるわけでもありません。
それでも絵画教室に通わせてもらえる子は、子どもの内面を大切にしている大人がそばにいるのではないでしょうか。
損得勘定なく「子どもの希望」「子どもの適性」を尊重してくれる大人がそばにいることは、とても恵まれた環境だと思います。

おわりに

「絵画教室に通っている子どもはどんな子が多いですか」の答えは、
「絵を描くことが好きで、自分の個性も他人の個性も大切にできる芯がある子」です。
そして大切にしてくれる大人が周囲にいる子です。

表現することは、自分の芯がなければできません。
周囲から大切にされているからこそ自分に自信をもち、芯ができます。

絵画教室には、ひとりひとり全く違った個性をもち、お互いに成長しあえる子どもたちがたくさんいます。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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