うちの子は絵の才能ありますか? 子どもの好きなことと才能の関係

子どもに絵を習わせるとき、親は「才能があればいいけれど、才能がないなら無駄になる」と考えるかもしれません。才能とは何でしょうか?

今回は、子どもの好きなことと才能の関係についてお話しします。

「才能」とは「好きだ」と心の底から思うこと

「才能は持って生まれてくるもの」と言われることがあります。
才能を「秀でたスキル」と考えれば、絵の才能がある人は生まれながらに絵がうまい人です。
しかし、どんなに絵がうまい人でも、絵を描くことが嫌いだったら、せっかくのスキルを活かすことはできません。

筆者は、才能はスキルではなく「好きだ」「やり続けたい」と心の底から思う気持ちだと考えます。
大人になってからでも「自分はこれが好きだ」と言い続けられる人は意外と少ないものです。

「趣味はとくになし」「時間があれば休みたい」という大人が多いのではないでしょうか。
心の底から好きなものがある人は、たとえ時間がなくても好きなことをやります。
その「やる気」が才能ではないでしょうか。

子どもの才能(好きなことや続けたいこと)を発見するためには「できること」「秀でた能力」を探すのではなく、子どもが興味を持ち、時間がなくてもやりたがることをみつけることが大切です。

そして、親が「この子はこれが好きだ」と感じたら、できるだけ好きなことを伸ばせる機会を与えましょう。
それこそが「才能を伸ばすこと」です。

ぬり絵や工作ブックが好きな子は集中力がある子

ぬり絵は、描かれた絵に色をつけます。
白い紙に一から絵を描くわけではないため、絵が苦手な子どもでも取り組みやすいでしょう。

「絵は描かないけどぬり絵は好き」という子どもはたくさんいます。
色を付けることや細かな作業をすることが好きなのではないでしょうか。

工作ブックが好きな子どももいます。
工作ブックは、見本通りに組み立てて、ペーパークラフトを作ります。
切り取り線で丁寧に切り抜き、手順通りに折ったり貼ったりする根気が必要な作業です。

工作ブックが好きな子どもは、しっかりと説明文を読み、見本通りのペーパークラフトが完成することに喜びを感じるのでしょう。

ぬり絵や工作ブックは集中力が必要です。
一定のルールや下地の上でコツコツと作業をしてゴールを目指す才能があるのではないでしょうか。

とにかく絵を描いている子は絵が心の栄養になっている子

時間があれば絵を描いている子どもがいます。
毎日似たような絵を繰り返し描くこともあれば、自分で考えたキャラクターやモンスターを描くこともあります。

いずれにしても、毎日コツコツ続けている姿をみれば、親は「絵が好きに違いない。
才能を伸ばしてあげよう」と思います。

しかし、とにかく絵を描いている子には「よりよい絵を描くために描いている子」と「絵を描くことが日課になっている子」がいます。

前者の場合は、より高いテクニックや視野を広げるためにも教育を受けられる機会を与えてあげるといいでしょう。
後者の場合は、絵を描くことでストレス解消しているのかもしれません。

子どものストレス解消といえば、公園で元気に遊んだり、ゲームをしたり、スポーツをしたりすることをイメージします。
それらと同じように絵を描くことが心の栄養となっていることがあります。
絵を描くことが心の栄養となっている場合は、テクニックを伸ばす目的ではなく、のびのびと絵が描ける環境がある教室を選ぶといいでしょう。

絵本やアニメが好きな子は感受性が鋭い子

絵本やアニメにはストーリーがあります。
ストーリーを理解しながら絵をみることで、より絵を深く読み解くことができます。
絵本やアニメが好きな子どもは、絵を通してストーリーの中に入り込む鋭い感受性があります。

絵本「おふろだいすき」(福音館書店)は、一般家庭のお風呂にクジラやかばなどの動物たちが次から次へとやってくるストーリーです。

同じ絵本を読んでも「クジラが風呂場に入るわけがない」という子もいれば「うちにも来たらいい」という子もいます。
お風呂の大きさを指摘した子どもは現実的な視点でストーリーを感じています。
「うちにも来たらいい」という子どもは、自分自身をストーリーの中に入れてしまうほど感受性と想像力があります。
どちらがよくてどちらが悪いということはありません。
感じ方の違いです。

親の好みで「そういうことは言わないの! 」と言ったり「ちょっと幼すぎる考え方だ」と思ったりせず、子どもの感じたことをそのまま受け止めることが大切です。
子どもは、自分の発言や感じ方を受け入れられることで安心して「自分の好きなこと」を伝えることができます。

おわりに

「うちの子は絵の才能ありますか」という質問の答えは、ずっと後にならないとわかりません。
才能とは「続けたいほど好きな気持ちだから」です。

ぬり絵や工作ブックが好きな子どもは集中力をもって絵に取り組めるかもしれません。
絵が心の栄養になっている子どもは、絵を大切に思う気持ちは誰にも負けません。

絵本やアニメが好きな感受性が強い子どもは、自分の絵だけでなく他の作品を見ることで新たな夢ができるかもしれません。
絵に対する興味の方向は違っても「好きなことやもの」がある子どもは才能がある子です。

どの才能をどうやって伸ばすかは、いろんなことをやってみて徐々にわかってくるものではないでしょうか。
そして最後まで続けることができたとき「これが自分の才能だった」とはじめてわかるのかもしれません。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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