決断力がない子どもの特徴とは? 絵画教室が子どもの決断力を上げる理由

自分の子どもが「自分で決められない」「まわりに意見が流される」と思ったことはありますか。
協調性や社交性は集団の中で居心地よく過ごすために必要なことですが、
決断力や独創性は自分らしく生きるために不可欠です。

今回は、決断力がない子どもの特徴を挙げて、
絵画教室が決断力を上げるために必要な力を育てられる理由をお話しします。

決断力がない子どもの特徴

親が「うちの子は決断力がない」と思っていても、実は親の基準に見合っていないだけで、
子どもとしては十分な決断力が備わっていることもあります。
一方、決断力とは関係ないようにみえる一言や行動が実は「決断力の無さ」のあらわれであることもあるのです。

まずは日常生活の中でみられる決断力がない子どもの特徴を例に挙げて、
本当に自分の子どもには決断力がないのかを考えてみましょう。

<人と比べる>

親が「決断力がない」と判断する基準のひとつに「返答が遅い」ということがあります。
就職面接では質問に対してハキハキとすぐに返答することが必要ですが、
判断力が未熟な子どもに同じレベルを求めることはできません。
子どもの中にはじっくりと答えを考えて、本当に言うべき答えを厳選してから声に出す子どももいます。
そのような子どもは返答が遅くなりますが、考える力も決断力もあります。

ただし、いつまでも自分の考えを言えず「あの子はどうするって? 」「みんなはどうするの? 」と言う場合は、
人と比べて答えを出すため、時間がかかるだけでなく、決断というよりも多数決の答えを待つことになります。
人と比べる習慣がついてしまうと「自分の意志」よりも周囲の意志を尊重するようになり、
自分らしい生き方とは離れてしまいます。

<やる前から「できない」と言う>

決断力が必要なシチュエーションは、何かを始める時が多いのではないでしょうか。
例えば「スイミングをやってみる? 」と子どもに聞いたとき「できない」と答えるならば、
決断する以前に失敗を恐れて決断を避けているのかもしれません。

物事を決断すると、決断と同時に失敗するリスクも発生します。
質問に対して「できない」と答える子どもは、決断による失敗のリスクから自分を守ることで精いっぱいになっているのかもしれません。
失敗や恥をかくことを恐れている子どもは、どうしても決断力が上がりにくくなります。

<親や先生の指示を待つ>

親や先生の指示に従う子どもは「いい子」と見られます。
しかし、親や先生の指示に従っているだけでは「指示待ち」になってしまい、自分で考えて決断する力は育ちません。

もしも親や先生からみて「いい子過ぎる子」ならば、親自身の言動を見直してみてもいいのかもしれません。
例えば病院に行ったとき、医師が子どもに「どこが痛いの?」と質問しているにもかかわらず、
親が真っ先に「お腹です」と答えてはいないでしょうか。
学校の夏休みの宿題も親が率先して材料や作り方を調べて、子どもは指示通りに手を動かすだけの状態になってはいないでしょうか。

決断力をなくす原因は、意外と周囲の大人にあることもあります。

<失敗した責任の元を追求する>

親が小さな子どもに対して「これは誰のせい? 」と責任を追及しながら怒っている光景をみることがあります。
子どもの言動で物事がうまくいかなかったときに責任を追及して謝らせることを繰り返していると、
子どもは責任が生まれることを恐れて決断できなくなってしまいます。
そして失敗したときに自分には責任がないことを主張するようになってしまうのです。

もしも子どもが友達と遊んでいるときに「ここに置いたのは誰? 」「誰がこれを決めた? 」と失敗した責任の元を追及しているようならば、のびのびと決断をする余裕が心にない状態なのかもしれません。

絵画教室が子どもの決断力を上げる理由

決断力がない子どもは、決める力がないのではなく、決断を妨げる原因があるのかもしれません。
絵画教室には、心の中にある決断を妨げる原因を和らげる要素があります。

<自己肯定感が上がって人と比べなくなるから>

人と比べる子どもは自分に自信がもてず、人と比べることで自分の価値を認識しているのではないでしょうか。
「ありのままの自分が好き」「自分が大切」と思っている自己肯定感が高い子どもは人と比べることはなく、
常に自分の気持ちに耳を傾けて自分基準で決断します。

美術が自己肯定感を育てる話は「美術で子どもの自己肯定感が育つ理由と方法」で詳しく書いています。

URL「美術で子どもの自己肯定感が育つ理由と方法」:https://atelier-chicora-online.com/2022/10/18/%E7%BE%8E%E8%A1%93%E3%81%A7%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%AE%E8%87%AA%E5%B7%B1%E8%82%AF%E5%AE%9A%E6%84%9F%E3%81%8C%E8%82%B2%E3%81%A4%E7%90%86%E7%94%B1%E3%81%A8%E6%96%B9%E6%B3%95/

自己肯定感を育てることは決断力を育てることにもなります。

<すべての作品を失敗作にしないから>

絵画教室では「これは失敗したね」と言われることはありません。
つまり失敗がない場所です。そのため子どもが「できない」と答える必要はありません。
どんな課題が出されても自分で決断したことを描けばいいのです。
そして描いた作品は、どの作品も失敗作にはなりません。
「どんな作品でも認めてもらえる」という安心感が子どもの決断力を育てます。

<絵を描くことは指示ではなく決断の積み重ねだから>

絵画教室では「みなさん、ここは赤色で塗ります」という指示はありません。
桜の花を描くときでも「花はピンクで描かなければならない」という指示はありません。
桜の花を白色で描いても青色で描いても失敗作にはなりません。
たとえ青色を選んだとしても、青色に決断した理由があればそれはそれでいいのです。

絵を描くことは小さな決断の積み重ねです。
大人からの指示がなくなり、自分で決めることの楽しさに気がつけば、決断力は育ちます。

<絵画教室での作品には責任追及の必要がないから>

プロとして絵を描くようになれば作品に対して責任をもつ必要があります。
しかし絵画教室での作品には責任追及の必要はありません。
自分の作品に対する決定権は自分にあり、たとえ間違えたとしても誰からも責任を追及されることはないのです。
過剰な責任から解放されることで、子どもの決断力は育ちます。

ただし、作品によって誰かが傷ついたり、誰かの作品を侮辱したりしたときには指導が必要です。
絵画教室の先生は、のびのびと子どもの心を開放しつつ、すべての子どもたちの自由な表現を守るために注意深く子どもを観察しています。

おわりに

小さな子どもには決断力がありません。
まだ決断に必要な材料が備わっていないからです。
しかし、さまざまなことを体験し学ぶことで、正しい決断を導く材料が蓄えられます。

決断力がない子どもは、決断する材料がないのではなく、材料を使って最後に決める「一押し」がないのです。

絵画教室は「最後の一押しの力」となる自己肯定感を育てます。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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