知りたい! 絵が上手い子の意外な習い事と絵に与える影響

同じ年齢の子どもと比べてモチーフの形が正確に描けたり、創造力が豊かだったりする子どもをみると「うちの子と何が違うのかしら」と考えることがあるかもしれません。
実は、意外な習い事が絵に影響していることがあります。

今回は、絵が上手い子の意外な習い事と絵との関係についてお話しします。

表現することの楽しさがわかる「ピアノやバイオリン」

絵が上手い子は表現力をもっています。
一般的に「絵が上手い子」といえばモチーフの大きさや比率が正確に描ける子と思われがちですが、正確に描くことは訓練すればできるようになります。
本当の「絵が上手い子」とは、自分の世界観をもっていて内に秘めたものを絵に表現できる子です。
自分の世界観は、経験や環境によって徐々にできあがってくるものですが、表現力はさまざまな方法で訓練することでも身につきます。

ピアノやバイオリンなどの音楽の習い事は、音で表現することを習います。
まったく同じ曲でも演奏する人によって印象が変わるのは表現の仕方が違うからではないでしょうか。
楽譜通りに引くだけならばロボットでもできます。
音楽の楽しさは、感情を込めて情緒豊かに演奏したり歌ったりすることです。
楽器や歌で表現することの楽しさを知っている子は、絵で表現することも上手いです。
「表現」の意味を知っているため、自由に自分の感情を絵にします。

全体を意識することと集中力がつく「お習字や書道」

お習字は、字を正しく美しく書くことを習います。
数十分ではありますが、小さな子どもがお手本をみながら字を習うためには集中力が必要です。
またお習字から書道になれば、字で表現することができるようになります。
紙の上に構図を考えて字を配置することは絵ととても似ています。

お習字と書道には、絵が上達する要素があります。
集中力は絵を描くときにも必要です。
バランスを考えて表現することは絵と通じるものがあります。

絵だけじゃないことがポイント「工作教室・造形教室」

絵が上手い子は、絵を描くことが好きです。
絵を描くことが好きな子はもの作りも好きです。
ラップの芯や空き箱は大切な材料になります。
家庭でも工作をすることはできますが、子どもだけの力では限界があります。
工作教室や造形教室では、家庭では使わない材料を使って子どもの興味を惹くテーマを与えます。

絵が上手い子は、意外と絵だけではなく工作も得意です。
常になにかを作っていることで創造力が豊かになります。
子ども向けの絵画教室では、絵画教育と工作を同時に行います。
平面で表現する絵だけではなく、立体で表現する工作も取り入れることで、より子どもの発想力や想像力を豊かにします。

理解力が高いと上達する「学習塾」

絵の上手さと勉強は関係ないと思われることがあります。
しかし実際は、理解力が高い方が絵の上達も早いです。
なぜならば、絵を描くことは感覚だけで描くのではなく、理系の思考が大切だからです。
例えば、球体をデッサンするとき、なんとなく感覚で丸く線を描いていても球体にはみえません。
「球体はなぜ球体にみえるのか」を理系の思考で考えてみると、どうやって描けば球体にみえるのかがわかるのです。

絵が上手い子は、指導を受けたときの理解力があります。
「黒い球体を白いテーブルの上にのせると、テーブルに光が反射してここが明るくなるよ」と指導を受けたとき、光の反射や言葉の理解力があると、指導がスッと解釈できます。
学習塾は絵とは全く関係がないようにみえますが、実は間接的に絵とつながっています。

習い事を増やさずに家庭でできることとは

絵が上手い子は、バランスよくさまざまな力をもっています。
しかし、すべてを習い事で手にしようと思えば、たくさんの習い事をしなければなりません。
絵を描くために必要な表現力や集中力や理解力、作ることの楽しさを知ることは家庭でもできます。

表現力や理解力は、親子の会話でも育むことができます。
子どもと会話をするときに平坦な話し方ではなく、表情豊かにたくさんの語彙で会話をすることが大切です。
きれいな花をみたときに「きれい」だけではなく「華やかさがある」「繊細な美しさ」と表現すると、より美しさが具体的に伝わります。
もっとカジュアルに「ヨーロッパっぽい」「ディスにーの映画に出てきそう」という表現でもかまいません。
自分らしく表現することが表現力アップにつながります。
会話は理解力アップにも役立ちます。

作ることの楽しさは、工作だけでなくお菓子作りや料理でも味わうことができます。
餃子やおはぎは、集中力が必要な料理であり、作る楽しさもあります。

おわりに

筆者は子どものころからたくさんの習い事をしてきました。
バレエとピアノ、お習字と料理、演劇も習いました。
しかし、絵だけは美大受験予備校に行くまで一度も習ったことがありませんでした。
それにもかかわらず、美大に進学したのです。
今振り返ってみると、絵とはまったく関係がないようにみえる習い事から少しずつ美術に通ずるものを得てきたような気がします。

「無駄なことはない」という言葉がありますが、絵を描くうえでも無駄なことや経験はないのではないでしょうか。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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