絵画や美術のハードルをグッとさげる! おすすめの映画と本

絵画や美術は、堅苦しく考えず自分の気持ちに素直になることが楽しむコツです。
とはいっても、教科書の中の美術はハードルが高く、なかなか楽しむまでには至りません。

今回は「見るだけ」「読むだけ」で素直に感動し、美術のハードルをグッとさげてくれる映画と本を紹介します。

教科書の中の人が身近に感じる映画「ミッドナイトインパリ」

映画「ミッドナイトインパリ」は、2011年のカンヌ国際映画祭で公開されました。
ポスターにはゴッホの作品が使われ、一目で「美術の映画だ」とわかります。
ただ、内容は美術一色とは違います。
人間模様や生き方など映画としてみても楽しめる作品です。

映画「ミッドナイトインパリ」は、映画の中にたくさんの有名な画家たちが登場します。
ピカソやダリ、ゴーギャンやロートレックなど見た目の個性が強い人が多いため、美術にくわしくない人でも「この人、美術の教科書で見たことがある」と気がつくでしょう。

おすすめする理由は、美術が教科書の中だけで起きていることではなく、本当に生身の人間が描き、長い年月をかけて受け継がれてきたと感じるからです。
本物の画家にそっくりな俳優陣が演じていることで、画家の生きていた時代や作品が生まれた当時の雰囲気を感じることができます。

また、画家や作家を目指しているけれど、なかなか芽がでずに悩んでいる人にも、ぜひみてほしい作品です。

芸大美大受験がよくわかるマンガ「ブルーピリオド」

マンガ「ブルーピリオド」は、2017年から連載された山口つばさ氏の作品です。
ひとりの男子高校生が東京芸術大学を目指す話です。
美大受験予備校や一緒に合格を目指す友人との関係、受験直前のトラブルなど、どれも実際に芸大受験を経験した本人だからこそ描けたリアルな内容です。

マンガ「ブルーピリオド」は、絵画や美術のハードルをグッとさげるというよりも、むしろ美術の道に進むことの厳しさや気持ちのもち方、現実を教えてくれます。
主人公が芸大受験直前に蕁麻疹がでるシーンがあります。
これは筆者も体験しています。
筆者の場合は、もっと症状がひどく、夜間救急で病院に運ばれ点滴を受けました。
結局、翌日に試験を控えていた1校は受験できず悔しい思いをした経験があります。
また、マンガの中には美術の道を進むなら心に留めておきたい言葉も数多くあります。

美術に興味がなくても読みやすい小説「異邦人」

原田マハ氏は、美術に関する小説をたくさん書いています。
ゴッホの人生を題材にした小説「たゆたえども沈まず」は高校の入試問題にも使われました。
小説「たゆたえども沈まず」は、美術やゴッホが好きな人にはおすすめですが、美術に興味がない人には難しく感じるかもしれません。

おすすめは小説「異邦人」です。
異邦人とは外国人を意味する言葉ですが、小説の中ではちょっと違う意味で使われています。
国内の美術界を舞台にした小説ですが、話の内容は夫婦関係、家族関係、師弟関係と複雑に絡み、話の結末が知りたくて一気に読み切ってしまいました。
おすすめする理由は、絵画作品の描写の上手さです。
小説の中にはたくさんの絵画が登場しますが、文字だけで絵の魅力がひしひしと伝わってきます。
読後は、主人公が小説の中で出会う作品のように「一目で心に刺さる絵」に出会ってみたいと感じるでしょう。

自由に表現できることのすばらしさがわかる映画「HOKUSAI」

映画「HOKUSAI」は、2021年に公開された日本の映画です。
豪華な出演者で話題となりました。
葛飾北斎の映画ですが、北斎の人生がわかるだけでなく「当たり前に絵が描ける幸せ」に気づかせてくれる映画です。
また、北斎といえば独特な青色「ベロ藍」が有名ですが、映画の中では北斎がベロ藍をみつけたときの喜びを田中泯氏が全身で表現しています。
美術だけでなく舞踏や文章など芸術のすばらしさがちりばめられています。

映画「HOKUSAI」には歌麿も登場します。
歌麿は、禁制されている絵を描いたため、50日間も手錠をかけたまま牢獄に入れられました。
今は、絵画や美術のハードルを自分であげたりさげたりできる幸せな時代であり、北斎の時代はさげたくてもさげられなかった時代でした。

映画「HOKUSAI」は、映画をみるだけで「自由に描いてもいい時代なのになぜ描けない? 」と絵を描くハードルをグッとさげてくれるでしょう。
また、映画に登場する作品「男浪」「女浪」は、東京芸術大学の向井大祐氏や松原亜実氏が実際に描いた作品です。
浮世絵を摺るときに使う道具や手摺りの技法など、浮世絵好きにはたまらない見どころもあります。

おわりに

絵画や美術の魅力を伝える手段は美術館や画集だけではありません。
映画やマンガは心を感動しやすい状態にしてくれます。
また、映画やマンガ、小説は美術に興味がない人や知識がない人を対象にして制作されているものがほとんどのため、とても理解しやすいのです。
映画「ミッドナイトインパリ」や映画「HOKUSAI」は、知識があるとさらに細かい演出に気がつくことができます。
映画やマンガをきっかけにして、美術の世界をのぞいてみてはいかがでしょうか。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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