絵を描く集中力がない人の4つの共通点と対処方法

絵を描く集中力がない状態が続くと、他に集中できることを探してしまい、絵を描くことから遠ざかってしまうことになりかねません。
とはいっても、集中できない理由は意外とわかりにくく、対処方法に悩んでいる人はたくさんいます。

今回は、絵を描く集中力がない人に共通する点を4つ挙げて、対処方法をお話しします。

絵を描く楽しさを感じていない

絵に限らず、集中できない一番の理由は「楽しさ」を感じていないからです。
おもしろい映画を観ているときには時間があっという間に過ぎていきますが、つまらない映画を観ているときには時間が過ぎていくのがとてもおそく感じます。

それと同じように「絵を描く楽しさ」を感じていない人は、集中力が途切れてしまい、義務感で描き続けることになるのです。

筆者が美大受験予備校に通っていたとき、同じアトリエの中に、いつも途中でコンビニに行ってしまう人たちがいました。
その人たちに共通している点は「やる気がない」です。
絵の上手い下手は関係ありませんでした。

一方、じっと座って描き続ける人に共通している点は「上達中」です。
集中できない人たちは、アトリエで絵を描く楽しさを感じていないから、もっと楽しいコンビニに行ってしまいます。
しかし、上達中の人は描けば描くほどいい作品になるため、時間を忘れて絵を楽しんでいます。
集中力と楽しさはとても深い関係があります。

ただ、集中できていなかった人たちの中に、画材が変わった途端に集中できるようになった人がいました。
画材が変わったことで、自分の表現ができるようになり楽しさを感じるようになったのです。

どこに手を入れたらいいのかわからない

集中力がないようにみえる人の中には、集中力がないのではなく「八方ふさがりになっている人」がいます。
つまり、これ以上どこに手を入れたらいいのかがわからず、前に進めない状態になっているのです。

とくにデッサンは、ものの見方がわからなければ、どこに手を入れるべきなのかがわからなくなります。
とりあえず手を動かしていると、絵は真っ黒になってしまいます。
集中力が途切れる原因が「どこに手を入れたらいいのかわからない」ならば、できるだけ早く適切な指導を受けて前に進めるようにした方がいいでしょう。
わからない状態が長く続くとストレスになり、続ける意欲までなくなってしまいます。

絵を描く環境が悪い

集中力と環境も密接な関係があります。
集中力を奪う環境は、外部にあることもあれば自分にあることもあります。
そして人間関係が原因であることも意外と多いのです。

例えば、絵を描く場所がなかったり、画材がなかったりすることは原因が自分以外の外部にあります。
必要なものを準備することで環境は整います。
音がうるさくて集中できない、寒くて集中できないという理由も自分以外の外部であり、対処は比較的簡単です。
体調が悪かったり、やるべきことが多すぎたりして集中できない場合は、自分に原因があります。
優先順位を考えて、絵に集中できる時間や環境を確保する必要があります。

そして意外とやっかいなことが人間関係です。
集中力を妨げる人間関係があると、それを断ち切ることはとても難しいかもしれません。

筆者が美大受験予備校時代に出会った「途中でコンビニに行く人たち」は複数人のグループでした。
グループの中のひとりが「コンビニに行こう」と誘えば、集中しかけていた人も「おつきあい」で行ってしまうのです。
人間関係の環境が悪いときには、それを断ち切るくらいの「絵への執着」が必要です。

リミット(しめきり)がない

独学で絵を描いている人には描き上げるリミットがありません。
好きな時間に好きなだけ絵を描くことができます。
言い換えれば、ずっと描き終えなくてもいいのです。

「急ぐ仕事ほど忙しい人に頼め」という言葉があります。
忙しい人は、限られた時間の中で仕事を終えなければならないため、集中して仕事に臨みます。
時間がたっぷりある人は、早くできることもゆっくりと進めてしまうのです。

「ゆっくりでいいんだ」と思えば集中力は弱くなります。
コンクール出品など完成にリミットを設けることで集中力のトレーニングになるのではないでしょうか。

絵を描く集中力がない人の対処方法

「絵を描く集中力がない」と感じている人には、4つの共通点の中でどれかに思い当たる点はないでしょうか。
4つの点に対処できる場所が絵画教室です。

絵画教室は、絵のスキルよりも絵を描く楽しさを伝えることを大切にしています。
絵画教室の先生は、どこに手を入れたらいいのかわからない生徒に適切な指導をします。
絵画教室は、ひとり一人に応じたカリキュラムがありますが、作品制作にはリミットもあります。

ただし、集団で習う絵画教室の場合は、人間関係があります。
人間関係は、よく働けばウィンウィンの関係になりますが、悪く働けば足の引っ張り合いになってしまいます。

人間関係の環境を悪くしないためには「絵に真摯に取り組む雰囲気のある絵画教室」を選ぶことです。
「この教室では絵にまじめに取り組む生徒ばかりが集まっている」という雰囲気がある教室では、そう簡単にその環境を乱すことはできないはずです。

おわりに

筆者も絵を描いてきましたが、いつでも集中力があるわけではありませんでした。
集中できないときには「今日はアウトプットではなくインプットにしよう」と切り替えて、美術館に行ったり、映画館に行ったりしたものです。

大切なことは、火が燃えるように集中して絵を描くよりも、水が流れるように絶え間なく描き続けることなのではないでしょうか。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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