絵を描きたいけれど「描きたいものがみつからない人」の弱点と克服するための考え方

絵を描きたい気持ちはあるけれど、何を描いたらいいのかがわからない人がいます。
描きたいものがみつからない人には、考え方に共通点があります。

今回は、描きたい気持ちはあるけれど、描きたいものがみつからない人に共通している弱点と克服するための考え方をお話しします。

描きたいものがみつからない人の弱点

<絵になるものを探してしまう>

描きたいものがみつからない人は、実際に手を動かす前に「これを描いたらどういう絵になるか」を想像しがちです。
そして「絵になる」と思えれば描くけれど、「絵にならない」と思えば描きたいとは思いません。
一方、いつも絵を描いている人は「絵になるもの」という考え自体がありません。
目の前にあるものを「いかに絵にするか」を考えているのです。

<描きたいところより描けないところが目についてしまう>

描きたいものがみつからない人は「ここを描きたい」という思いよりも「ここは描けない」という思いの方が強い傾向があります。
例えば、迫力ある象をみて「象を描きたい」と思っても、すぐに「象の独特の肌質が描けない」と思い「描きたくない」と思ってしまうのです。
本当は「描きたくない」ではなく、描く自信がないだけですが「描けないものは描きたくない」と考えてしまい、実際に手を動かすことをしない傾向があります。

<絵を描くことに気負ってしまう>

「私、絵を描きたいけれど描きたいものがみつからないの」と言う人がもっている絵のイメージは、とてもきちんとした絵です。
完成度が高く、額装して飾るようなものを絵と思っています。
そのため、絵を描き始めるときには、人一倍気負ってしまう傾向があるのです。
「絵を描くならば、描く労力に応じたモチーフを探さなくては」と思うから、なかなか描き始めることができません。

弱点を克服するための考え方

3つの弱点は、考え方を変えるだけで克服することができます。

ここからは、絵をもっと気軽に楽しみ、絵を描きやすくする考え方を紹介します。

<絵になるものを描くのではなく目の前にあるものを絵にする>

絵は写真とは違います。
絵は、目に見えるものをそのまま紙に描きうつすのではなく、モチーフから感じたことを目に見えるようにするものです。
例えば、目の前に1本のアスパラガスが置いてあります。
「1本だけでは絵にならない」と思う人は、アスパラガスから何も感じていない人です。
画家のマネはテーブルにあった1本のアスパラガスを描いています。
実は、この「アスパラガス」という作品にはユニークなエピソードがあります。
エピソードについては「大人も絵に興味がわく「おすすめ絵画4選」とエピソード」で紹介しています。

参考URL:https://atelier-chicora-online.com/2022/07/01/%E5%A4%A7%E4%BA%BA%E3%82%82%E7%B5%B5%E3%81%AB%E8%88%88%E5%91%B3%E3%81%8C%E3%82%8F%E3%81%8F%E3%80%8C%E3%81%8A%E3%81%99%E3%81%99%E3%82%81%E7%B5%B5%E7%94%BB4%E9%81%B8%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%82%A8%E3%83%94/#%E6%8F%8F%E3%81%84%E3%81%9F%E5%8B%95%E6%A9%9F%E3%81%8C%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%93%E3%81%84%E3%81%84%E3%80%8C%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%A9%E3%82%AC%E3%82%B9%E3%80%8D%E3%83%9E%E3%83%8D

たった1本のアスパラガスでも、見方や考え方が変わるだけで立派な絵のモチーフになります。
大切なことは「絵になるかならないか」ではなく「何を感じるか」です。
感性豊かな人は、目に入るすべてのものから何かを感じます。
1本のアスパラガスでも「きれいなアスパラガスだな」「これは、置いてあるのではなく落ちてしまったみたいだ」と考え絵にします。

「感じよう」と思うことなく絵になるものを探しても、絵になるものはみつかりません。
それよりも、目の前にあるものをよく観察して、自分が感じたことを絵にするように考え方を変えてみましょう。
そうすれば、描きたいものは目の前にあることに気がつくでしょう。

<描く理由がひとつでもあるなら描く>

「100%描きたい」と思うものを探すことは難しいです。
一方、1%の描かない理由を探すことはとても簡単です。
描かない理由や描けない理由を探していたら、いつまでも描きたい気持ちにはなりません。
まずは「描きたいな」と思ったら、余計なことは考えずに手を動かしてみましょう。
実際に手を動かしてみると、描けない箇所や改善点が具体的にわかり始めます。
改善点がわかったら、あとは描く技術を学ぶだけです。

<呼吸をするように絵を描く>

額装して飾るものだけが絵ではありません。
メモ用紙に描いた絵でも立派な絵です。
気負わずに描くことが絵を楽しむコツです。

画家のモネは「鳥が歌うように絵を描きたい」と言っています。
鳥のさえずりはとても自然です。
一般の人ならば「あの鳥が歌う意味は」とは考えず、無意識のうちに聞いて心地よく感じています。
鳥自身も「きれいに歌えなければ歌わない」とは考えていないでしょう。
自然な流れの中で鳥は歌い、人は鳥のさえずりを聞いています。
モネは「鳥が歌うように軽やかな気持ちで絵を描きたい」と考えていたのではないでしょうか。

絵は気負って描く必要はありません。
呼吸をするように描けばいいのです。
呼吸に失敗や成功はありません。

おわりに

描けるものは目の前にあります。
描きたいものは考え方を変えればみつけることができます。
テーブルの上にあるお菓子のビン、ティッシュの箱も実際に描いてみると奥が深いことに気がつきます。

「絵を描きたいけれど」と思う気持ちがあるときが描き時です。
今、目の前にあるものを絵にしてみてはいかがでしょうか。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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