絵が描ける大人があえて絵画教室に通うメリットとは

「絵画教室は絵が下手な人が通うところ」と思っている人が多いのではないでしょうか。
そう考えると、絵画教室は「絵が上達したら通う意味がないところ」ということになってしまいます。

しかし、絵が描ける大人にも絵画教室には通うメリットがたくさんあります。
今回は、絵が描ける大人があえて絵画教室に通うメリットをお話しします。

絵を取り巻く時代の流れや変化を感じられる

絵が描ける人は、油絵や水彩画など得意な画材をもっています。
長年油絵を描いてきた人は、油絵一筋、水彩画を続けてきた人は水彩画一筋で腕を磨いていることが多いようです。

しかし、画材は進歩しています。
昔は、油絵の具といえば臭くて扱いが難しいものでしたが、今は水で溶ける油絵の具もあります。
さらにタブレットのように絵の具を使わずに油絵風の絵を描く方法も登場しています。
絵画教室に通うことでひとりでは知る機会がなかった画材や描き方を知ることができます。

また、油絵や水彩画のように昔からあるものでも時代の流れで雰囲気が変わっているものもあります。
例えば、油絵の有名画家といえばルノワールやセザンヌであり、リンゴや花や風景画が多いです。

しかし最近は、油絵といってもイラストのような作品や現代美術のような作品もあります。
キャンバスに平らに絵の具をのせるだけでなく、さまざまな材料をはりつけて表現している作品も今では多くあります。
新しい時代に受け入れられる作品と接することが自分の制作に大きな影響を与えることもあります。

絵が描ける大人だからこそ、絵画教室で新たに得られるものもあるのです。

絵を描く環境がそこにある

絵画教室に通うメリットは、技術の向上だけではありません。
絵を描く環境が整っていることもメリットのひとつです。
絵を描く環境を整えることは意外と大変です。
イーゼルやモチーフを置くスペースを確保するためには、かなり広い部屋が必要になります。
さらに、デッサンのモチーフは石膏像や牛骨など高価なものが多いです。
すべて自前で準備していたら相当の出費です。

さらに絵画教室は絵を描く空気があります。
絵の具の匂いや鉛筆と紙がこすれる音が自宅とは全く違う環境を作り出しています。

絵画教室には、一通りのモチーフがそろっています。
教室によっては、先生に絵を習う意外にも貸アトリエをしているところもあります。
整った環境は、絵を続けるためのポイントです。

人脈ができる

絵画教室に通う一番大きなメリットは、人脈ができることかもしれません。
絵の技術向上だけならば独学でもある程度は可能です。
しかし、同じ趣味をもち刺激を受けられる仲間をつくること独学だけでは難しいでしょう。

美術の世界は人脈がとても大切です。
例えば、イラストレーターや絵本画家になりたいと思い、一生懸命に絵を描いていても、それだけでは夢をかなえることはできません。
ごく一部の人は大きな公募展で優勝し、華々しくデビューする可能性もあります。
しかし、活躍している多くの人は、出版社との人脈、学生時代の人脈などの縁が仕事につながっています。
そして、人脈から学べることは実用的な情報です。
イラストレーターや絵本作家になりたいのならば、印刷知識や出版までの流れも知っておく必要があります。

夢は語るだけでは実現しません。
夢をかなえるためには、かなえるための手段や仕組みを知ることが大切です。

絵画教室には、その世界に精通した先生がいます。
業界の話を聞いたり、作品の見せ方を聞いたりできるプロとの出会いがあります。
絵が描ける大人だからこそ活用できる人脈もあるのです。

自分の位置を実感できる

絵が描ける大人は、絵を描く楽しさを知っているため、ひとりでも絵を描きます。
完成した作品は、気に入るものもあれば気に入らないものもあります。
評価の基準は自分であり、比べる作品は自分の作品しかありません。

絵画教室に通っていれば、絵を描く楽しさだけでなく、自分の作品の位置を知ることができます。
作品の位置とは、上手い下手のレベルであり、時代遅れになっていないかの確認であり、作風でもあります。
絵画教室に通うまでは「自分は絵が描ける」と思っていたけれど、通ってみたらそうでもなかったという話も意外とよく聞きます。

絵が描ける大人は、絵を描いてきた経験も絵を見る目ももっています。
そのため、絵画教室に通い多くの作品をみることで得られるものも多いのです。

おわりに

絵が描ける大人があえて絵画教室に通うメリットは、絵の技術以上のものを学ぶことができることです。
そして、ひとりでは得ることが難しい人脈や情報を得られることです。
絵が描けるからこそさらに高みを目指すことができます。

筆者も美大受験予備校に通っていましたが、今でも記憶に強く残っていることは絵の技術指導ではなく、出会った先生や友達であり、絵を描くアトリエの雰囲気です。
絵画教室には、絵の上手い下手とは関係のない「学べること」があります。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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