絵画教室に行きたいけれど、さまざまな理由で「無理かも」と思っている人も多いのではないでしょうか。
「無理かも」と思う内容は人それぞれであり、意外と先生に直接聞きにくいこともあります。
今回は「私には絵画教室は無理かも」と思う理由をいくつか挙げて、それぞれの悩みに答えます。
目次
描くスピードがとても遅いです。グループレッスンは無理ですか
結論から言えば、どんなに描くスピードが遅くてもグループレッスンは可能です。
ただし、一般的な絵画教室では、一つのモチーフを同時にみんなで描く教室も多いため、
自分だけ遅くなってしまうことに不安を感じている人もいます。
とくにレッスンの終盤に全員の作品を並べて講評される場合は、
周囲と比べて完成度が低くなるため劣等感をもってしまうこともあります。
劣等感をもってしまうと、絵を描くたびに「早く描かなくては」と焦ってしまい、
絵画教室に通う目的がずれてしまうのです。
絵を描くスピードには個人差があります。
描くスピードが遅い人は描き進め方がわからないため手が遅くなっている可能性があります。
描くスピードが遅いことが原因で絵画教室に入ることが不安な場合は、
グループレッスンでありつつ、個別の課題に対応している教室を選ぶといいでしょう。
周囲のスピードを感じつつ、個々の実力やスピードに応じたモチーフを選ぶことで無理なく描き進められるようになります。
よく「グロい絵」と言われます。グロい絵でも習えますか
もちろん、グロい絵でもそれがあなたの表現なのであれば、習うことはできます。
「グロい」とはグロテスクを意味しています。
現在は「気味が悪い」「不気味な」という意味で使われることが多いです。
つまり「グロい絵」とは、気味が悪い絵や不気味な絵ということになります。
実は、美術系の学生の中には「グロい作品」を描いたり作ったりする人がたくさんいます。
筆者も予備校時代には先生が講評しづらい作品を描いていました。
画家のゴヤも「黒い絵」というシリーズを描いていますが、グロい絵ばかりです。
自分の作品が「グロい絵」と言われると「描いてはいけない絵を描いてしまった」と思うかもしれません。
しかし、人に何かを感じさせることができる作品はスゴイ作品です。
「きれい」「上手い」「写真みたい」だけが絵の誉め言葉ではありません。
実は「グロい」も誉め言葉として受け止めていい言葉です。
ただ、誰かを傷つけたり不快にさせたりする作品は「グロい」ではなく「表現の自由のはき違え」です。
頻繁にスランプになります。描けない人に絵画教室は無理ですか
絵が下手な人が絵画教室に来ることは当たり前ですが、中にはまったく手が動かずに描けない人も絵画教室にはいます。
ただ、描けない人は下手な人よりも上達するまでに時間がかかるかもしれません。
なぜならば、上達する以前に描ける状態にしなければならないからです。
描けない人には、自信がないため描けない人と描き方がわからずに描けない人、
そしてスランプで描けない人の3種類の人がいます。
自信がない人や描き方がわからない人は先生の指導によって描けるようになるでしょう。
しかしスランプで描けない人は自分の中に消化しなければならないことがある状態です。
「今までの描き方に疑問を感じ始めた」「描いても納得できない」のように描けない理由が自分の中にあるのです。
スランプに陥るときは、アウトプット(描く)するときではなく、インプット(みる)するときかもしれません。
インプットすることで自分の答えをみつける糸口がみつかります。
絵画教室は絵の描き方を教えるだけでなく、たくさんの作品や作家との接点をつくる場所でもあります。
描けないときには、描くために絵画教室に通うのではなく、
新しい接点をみつけるために絵画教室に通ってみてもいいのではないでしょうか。
自分の描き方が確立しています。今さら習うことは無理ですか
絵を描いていると自分の描き方が確立してくることがあります。
筆者も先生から「どんな絵を描かせてもあなたの絵の特徴が出る」と言われたことがあります。
自分の描き方は個性であり強みになります。
ただ、あまりにも固く自分の描き方に縛られてしまうと、新しい可能性に気がつけないかもしれません。
自分の描き方が確立している人こそ絵画教室などで多くの作品をみて、先生の指導に耳を傾けることが必要です。
「確立=完成」ではありません。確立してから発展させることが必要です。
おわりに
今回例に挙げた「大人の悩み」は、本人からみれば「聞きにくい悩み」ですが、
絵画教室の先生からみれば「よくある悩み」です。
相談してみると、簡単に解決できることの方が多いでしょう。
絵画教室は、他の習い事とは違い「なにかをできるようにする教室」ではありません。
自分の内面を表現する教室のため、答えがない悩みもあります。
そんなときには「無理かも」とひとりで悩まずに思い切って先生に相談してみるといい答えがみつかるかもしれません。
なぜならば、絵画教室の先生たちもプロになるまでに似たような悩みをもち、悩んできた経験があるからです。
文筆:式部順子(しきべ じゅんこ) 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業 サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。 在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。