苦手克服! 「苦手なこと」別おすすめ画材

絵を描いてみたい気持ちはあるけれど、「汚れるのが嫌だ」「片づけが面倒」「大胆に描くのが怖い」など、さまざまな理由で一歩を踏み出せない人も多いのではないでしょうか。実は、苦手なことを克服するのに役立つ画材がたくさんあります。自分に合った画材を選べば、絵を描くハードルがぐっと下がり、より楽しく創作に取り組むことができます。

今回は、「苦手なこと」別におすすめの画材を詳しくご紹介します。

片づけが苦手なら「色鉛筆」

片づけが大変そうで絵を描くことに踏み出せない方には、まず「色鉛筆」を試してみてはいかがでしょうか。

油絵や日本画は、画材をそろえるだけでも手間がかかるうえ、使用後の片づけにも時間がかかります。例えば、油絵の場合、パレットや筆を洗浄するために専用の溶剤を使う必要があり、その準備と後片づけだけでもかなりの負担になることがあります。一方で、色鉛筆なら特別な準備は不要。使いたいときにさっと取り出し、使い終わったらふたを閉めてしまうだけで完了です。このシンプルさが、忙しい人やスキマ時間に絵を描きたい人にとって非常に魅力的です。

また、色鉛筆にはさまざまな種類があります。

  • 豊富な色数を楽しめる色鉛筆
    絵の具に匹敵するほど多彩な色がそろったセットがあり、混色の必要なく多くの表現が可能です。
  • 水彩色鉛筆
    描いた後に水を含んだ筆でなぞると水彩画のような効果が得られます。細かな線を描くことが得意な人や、水彩画に興味があるけれど筆使いが難しいと感じる人にもおすすめです。

これらの特徴を活用すれば、片づけが苦手な人でもストレスなく絵を楽しむことができるでしょう。

勢いよく描くことが苦手なら「パステル」「アクリル絵の具」

絵を描きなれるまでは、思い切って線を引くことができないものです。
色をつけるとなれば、さらに緊張してしまいます。

日本画やポスターカラーは、油絵のように色を重ねながら描くのではなく、きちんと全体のイメージを頭に描き、完成に向かって一気に色をのせる一発勝負型の画材です。
勢いよく描くことが苦手な人には、かなり勇気が必要な画材でしょう。
様子をみながら少しずつ描き進めたい人には、パステルやアクリル絵の具がおすすめです。

パステルとは、色がついた粉をスティック状に固めた画材です。
学校で使うチョークに似ています。
パステルは、油絵の具のように濃度が濃い色はつきません。
パステルカラーというように淡い色が特徴です。
パステルは、混ぜて色を作るのではなく、パステル自体の色数が豊富にあります。
少しずつ買い足して、色の幅を増やしていくといいでしょう。
パステルで描いた作品は、紙の上に粉がのっている状態です。
粉が吹き飛ばないようにフィキサチーフというスプレーを吹きかけて粉を固定します。

アクリル絵の具は、パステルよりも色が濃く、油絵の具よりも使いやすい画材です。
油絵の具は油で溶きますが、アクリル絵の具は水で溶きます。
一度固まると溶けないため、色を重ねながら描くことができます。
アクリル絵の具の注意点は、一度固まると溶けずに落ちないことです。
服についてしまうと落としにくいため、使うときには汚れてもいい服装で使います。

力や量の調整が苦手なら「クレヨン」

絵の具は、絵の具を溶いて使います。慣れてくると水分量の調整は難なくできるのですが、小さな子どもや使い慣れていない人には難しいかもしれません。
また、子どもがペンを使って絵を描くことがありますが、ペンは意外と力の加減が難しく、筆圧が強いとあっという間にペン先がつぶれてしまいます。

力や量の調整が苦手ならば「クレヨン」がおすすめです。
「クレヨンは汚れるから嫌だ」という声もありますが、クレヨンは油なので化粧を落とすときに使っているクレンジングで洗うときれいに落ちます。

クレヨンは、筆や色鉛筆よりも太さがあるため細かい作品には適さないと思われがちです。
しかしクレヨンは使い方によって、細かい作業もできます。

絵本の「クレヨンのくろくん」(童心社:なかやみわ作)をご存じでしょうか。
クレヨンの黒色の使い方がわかる絵本です。

クレヨンは、紙の上にクレヨンの層を作ることで絵を描きます。
層をしっかりと重ねると地層のようになり、層を削ることで絵を描くこともできるのです。
層をしっかりと作ってから爪楊枝で削っていけば、筆よりも細かい線を描くことができます。

アナログが苦手なら「タブレット・パソコン」

アナログが苦手な人は、タブレットやパソコンがおすすめです。
最近のタブレットは、知識やスキルがなくても感覚で操作できるものが多く、初心者でもかなりレベルが高い作品を描くことができます。また、デジタルで絵を描けばさまざまなことに作品を使うこともできます。

例えば、自分の作品を年賀状にしたりTシャツにしたりすることもできます。

タブレットやパソコンは「イメージがあるけれど描けない」という人にもおすすめです。
「水や金属の質感を描きたいけれどデッサン力がない」という人はたくさんいます。
今まではデッサン力不足が絵を描くことのハードルになっていましたが、タブレットやパソコンによってハードルは低くなっています。

また意外なメリットですが、画材のにおいが苦手な人にもタブレットやパソコンはおすすめです。

おわりに

苦手なことを無理なく克服するコツは、たくさんの画材を知ることです。
そして使ってみることです。
木炭デッサンは苦手だったけれど、鉛筆デッサンになったら楽しくなったという人もたくさんいます。

紹介した画材以外にも、マンガを描くときに使うつけペンやエアブラシなどまだまだ画材はたくさんあります。
最近は、スマホを使って指で絵を描くアプリもあります。
自分のお気に入りの画材をみつけて、苦手のハードルを飛び越えましょう。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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