【中高生】絵を描きたいけど。中学生高校生が美術の道をあきらめる理由とあきらめなくていい理由

中高生になると自分の意志で進路を考えるようになります。
美術の道に進んで画家やイラストレーターになりたいと思っている中学生や高校生も多いのではないでしょうか。
しかし、美術の道はなかなか周囲に理解されず、あきらめてしまうことも多いのです。

今回は、中学生や高校生が美術の道をあきらめてしまう理由とあきらめなくていい理由をお話しします。

あきらめる理由1:まわりの友達がうますぎるから

中学生や高校生で美術の道を志す人は、美大進学も視野に入ってきます。
夢いっぱいで美大受験予備校の門をくぐってみたら、まわりの人たちがあまりにもうまくてカルチャーショックを受けてしまうこともあるようです。
美大受験予備校の人たちをみていると「自分には無理だ」と思ってしまうかもしれません。

中学生は高校の美術科、高校生は美大受験まで数年しかありません。
「自分はまわりより出遅れた」と感じると、美術の道をあきらめたくなるのでしょう。

あきらめなくていい理由:中高生はスタートダッシュができるから

まわりの友達より出遅れたとしても、それだけで美術の道をあきらめる必要はありません。
なぜならば、中高生はスタートダッシュができるからです。
小さな子どものように、毎日少しずつ成長するのではなく、中高生は自分の気持ちと努力次第で成長のスピードを速めることができます。
肝心なことは、現在のおくれではなく、モチベーションを上げる気概と最終的に獲得するスキルの高さです。

あきらめる理由2:親が反対するから

子どもが「美術の道に進む」といったとき、反対する親も多いです。
筆者の親も「美大の学費は無理かも」「浪人したら厳しいかも」と思っていたに違いありません。
親孝行な子どもほど親の懐具合を気にします。
とくに美術の道は、美大を卒業すれば安全な将来が約束されるわけではありません。
親の立場からみても「もっと堅実な道を歩んでほしい」と思うでしょう。
「親が反対するかも」と思う道を進む覚悟はなかなかできることではありません。
「親が反対するから」は、夢をあきらめる大きな理由のひとつかもしれません。

あきらめなくていい理由:親は夢をもった子どもが誇らしいから

筆者は、親の心配をよそに美大に進学しました。
母はパートを増やして学費を稼いでくれました。
美術の道は不安定でありお金もかかります。

しかし美大を卒業して数十年経った今でも、筆者の母は「美大の学費を納めるときは毎回うれしかった」と言います。
パートで稼いだお金は、半期ごとに振り込む授業料でジュっと消えていきます。
それでも「子どもが夢をもって合格できた美大に授業料を振り込めること」は親としての働き甲斐であり生き甲斐だったのです。

筆者は今、子どもの親になっています。
今はわかります。
親が子どもの進路に反対する理由は「子どもが心配だから」「子どもにいい人生を歩んでほしいから」です。
たとえ反対したとしても、反対を押し切って夢に向かって突き進む子どもの姿を親は誇らしく思います。

あきらめる理由3:お金がかかるから

美術の道はお金がかかります。
美大受験ならば美大受験予備校に通います。
一般的な予備校よりも授業料は高めです。

美大や専門学校に進学してからも、作品制作費が授業料以外に必要です。
高等教育の就学支援制度が始まりましたが、すべてをまかなえるわけではありません。
「お金がかかるから」という理由も美術の道をあきらめさせる定番の理由です。

あきらめなくていい理由:入学時に購入するiPadで絵は学べるから

たしかに美術の道はお金がかかります。
美大は授業料が高く、絵画教室は画材代がかかります。
美術で稼ぐまでには、相当の投資が必要なことは確かです。

ただ「絵を描くこと」はお金をかけずにできます。
現在は、高校入学時にiPadやChromebookを購入します。
iPadさえあれば絵を描くことができます。
新たに画材を購入しなくても、もっているもので絵を描き学ぶことができます。
最初から「美術の道」と考えるとお金のことが心配になりますが「絵を描くこと」と考えればお金は問題ではありません。

筆者も美大進学前はお金のことがとても心配でした。
しかし「考えているだけでは前に進まない」と思い、一歩を踏み出しました。
結局、無理をしてでも親が学費を捻出してくれたからこそ今の自分があります。
「お金がかかるから」をあきらめる理由にしていては、なにもできないのかもしれません。
ときには親に無理をしてもらうことも、いい意味で親孝行なのではないでしょうか。

あきらめる理由4:大変そうだから

美術の道はあこがれるけれど「大変そうだからあきらめよう」と思う中高生がいるかもしれません。
結論からいえば、美術の道は大変です。
美大受験予備校でも「上手」と褒めてくれることは少なく、お客様扱いはありません。
美大に進学しても大手広告代理店の就職は学内審査があり、学内審査に通った学生しか就職試験を受けることができませんでした。
絵がとても上手でも、作品のプレゼンテーションが下手な学生は作品の良さを伝えることができず悔しい思いをしていました。
美術の道は厳しいです。

あきらめなくていい理由:覚悟を決めればいいから

美術の道は厳しいですが、覚悟を決めればあきらめる必要はありません。
例えば、医師になる夢は医大を出て国家試験に合格し、病院に勤務することで叶います。
美術の道は、厳しくても夢を叶えるまで絵を描き続ければいいのです。
大切なことは「描き続ける覚悟」を決めることです。

おわりに

中学生や高校生の夢はちょっとした悩みがあきらめの原因になることがあります。
夢をあきらめることは簡単ですが、夢を持ち続けることはとても大変なことです。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という言葉があります。
「多少のリスクがなければ大きなことを成し遂げられない」という意味です。
美術の道は険しいですが、険しい道の先には大きな達成感と素晴らしい景色が広がっています。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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