中高生必見! 「絵を習うとアーティスト・クリエイター・画家になれますか」の疑問に答えます

中高生になると将来のことを考えます。
企業に就職する道もあるけれど、なんとなく自由でかっこいいイメージがあるアーティストやクリエイターの道に憧れる人も多いのではないでしょうか。

今回は、中高生の疑問「絵を習うとアーティスト・クリエイター・画家になれますか」に答えます。

アーティスト・クリエイター・画家の違い

アーティストとクリエイターと画家の違いはどこにあるのでしょうか。
画家という言葉は、昔からあります。レオナルド・ダ・ヴィンチの時代から画家はいました。
ずばり「絵を描く人」です。

アーティストとクリエイターのわかりやすい違いは「クライアント(依頼者)の有無」かもしれません。
アーティストは、クライアントの意向に関係なく、自分の感性のみに従って作りたいものを作る人です。
一方のクリエイターは、デザイナーのようにクライアントから「こんなものを作ってほしい」という依頼を受けて、求められているものを自分のセンスで作る人といえるでしょう。

言い換えれば、アーティストは利益を考えず作りたいものを作る人、クリエイターは経済活動の中でモノを作る人なのかもしれません。

芸術はジャンルの垣根がなくなりつつある

以前は、アーティストやクリエイターだけでなく、もっと細かく呼び名が分けられていました。
例えば、彫刻家や映像作家、絵本画家やインダストリアルデザイナー(工業製品のデザイナー)、テキスタイルデザイナー(布や織物のデザイナー)のように作るモノによってジャンルが分類されていたのです。

しかし、最近の美術はジャンルの垣根がなくなっています。
油絵を描く人が油絵画家だけでなく、現代美術家として立体作品や映像作品も手掛けています。
建築科を卒業した人がCMディレクターになって映像を制作していたり、テキスタイルデザインを学んだ人が絵本を描いていたりするのです。

また絵を描く手段である「ツール」が増えたことで、美術と音楽の垣根さえもなくなりつつあります。
さらには、芸術とは正反対のジャンルと思われていた自治体や政府機関とも連携してプロジェクトを行う試みも始まっています。

武蔵野美術大学では、2019年に造形構想学部が誕生しました。
アーティストならではの感性で社会に新しい風を吹き込む人材を育成する学部です。
今までは美大といえばデッサンが必須であり、絵が描けなければ美大合格は不可能でした。

しかし、造形構想学部は「感性」が要のため、入学時にデッサンなどの実技試験はありません。
美大の中にも「絵を描かない学部」が誕生しているのです。

歌手のスピッツは武蔵野美術大学出身です。
シンガーソングライターの松任谷由実氏は多摩美術大学出身です。
脚本家の内館牧子氏も武蔵野美術大学出身です。
どの人も専攻とは全く関係のない道を進んでいるようにみえます。

「絵を習う」「美大を卒業する」ということで何かになれるのではなく、感性を培い「何かになるための土台」を作ることができるのです。

「絵を習うこと」は自分の中の引き出しを開けること

「絵を習うとアーティスト・クリエイター・画家になれますか」の質問の答えは「絵を習っただけでは何者にもなれません」です。

「絵を習うこと」は、自分の中の引き出しを開けることです。
「絵を習うこと」で自分の中にある引き出しの「開け方」を習います。
そして、引き出しの中にあるものは一人ひとり違います。

絵の具しか入っていない人もいれば、樹脂やタブレットが入っている人もいます。
絵の教室では、引き出しに新しいものを入れることもできるでしょう。
ただし、引き出しの中のものをどう使うかは「その人の感性次第」です。

感性や引き出しの数は、なにげない生活の中で増えていきます。
中高生は、さまざまなことに笑ったり怒ったりできる時です。
学校でのなにげない日々が、知らず知らずのうちに引き出しを増やしているでしょう。

「絵を習うこと」によって開かれたたくさんの引き出しは「やりたいこと」をみつけるヒントになります。
「私は画家になりたい」「インスタレーションをやってみたい」のように「やりたいこと」がみつかったならば、アーティストやクリエイターや画家といった名前にこだわることなく、進みたい道を進みたくなります。

絵を習っただけでは何者にもなれません。
ただ、絵を習うことによって何物にもなれる道を開くことができるのかもしれません。

おわりに

アーティストやクリエイターは、医師や弁護士のように資格がありません。
かといって「私はアーティスト」と名乗ればアーティストになれるわけでもないのです。

楽曲「うっせえわ」を生み出したAdo氏は、女子高校生シンガーで自宅のクローゼットで歌を録音していたそうです。女子高生であっても、クローゼットの中であっても、自分の表現をしているならば立派なアーティストです。

「絵を習うこと」で自分でも気づいていない引き出しを開けてみてはいかがでしょうか。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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