絵画教室に通う前に知っておきたい!デッサンの種類と目的絵の基本! 挑戦したいデッサンの種類と目的

デッサンは絵を描く上での基礎力を養う重要なステップです。もちろん、デッサンをしなくても素晴らしい立体作品を作ったり、魅力的なデザイン画を描いたりする人もいます。しかし、デッサンの力を身につけることで、表現の幅が大きく広がり、より奥深いアートを生み出せるようになります。

今回は、デッサンを種類別に分けて、それぞれの特徴と目的について具体的な例を交えながらお話しします。これから絵画教室に通いたい方や独学でスキルを磨きたい方にとって、役立つ内容です。

細部を極める「単体デッサン」

単体デッサンは、りんご1個や立方体1個など、シンプルな対象物を描く練習です。目的は、対象物の形や構造、陰影、質感を徹底的に観察し、正確に表現する力を養うことです。

例えば、毛糸玉とりんごを描くとしましょう。

  • 毛糸玉の場合:毛糸のふわふわ感を出すために、やわらかい鉛筆で紙の質感を活かしながら描きます。
  • りんごの場合:ツルっとした質感を表現するために、固い鉛筆を使い、滑らかな光の反射を意識します。

これらは形だけでなく、光と影の関係や質感の違いを理解するためのトレーニングです。単体デッサンは、細部にこだわる観察力を磨くのに最適な方法と言えるでしょう。

空間を描き出す「卓上デッサン」

卓上デッサンでは、自分のテーブルの上に複数のモチーフを配置し、それを描きます。単体デッサンとは異なり、複数のモチーフが互いにどう関係しているかや、それらが置かれている空間全体を描くことが目的です。

ここで重要なのは、陰影(陰)と影(シャドウ)の違いを理解することです。

  • :例えばりんごの光が当たらない部分。立体感を描き出すために必要です。
  • :りんごが光を遮ることで台にできる暗い部分。モチーフが置かれた空間を表現するために不可欠です。

卓上デッサンの目的は、影を描くことで空気感を表現することにあります。モチーフ同士の距離感や、光と影が作り出す空間の奥行きを描き出すことで、見る人に立体的でリアルな印象を与えることができます。

例えば、「陶器のマグカップとりんご」を描く場合、マグカップの硬質な表面とりんごの柔らかい曲線の質感を描き分け、さらに両者がテーブル上で作り出す影の形や濃淡を描き込みます。これにより、静物画としての完成度が大きく向上します。

陰影の正確さ「石膏デッサン」

陰影の勉強に適したデッサンが石膏デッサンです。
なぜならば、石膏は真っ白なので陰影がわかりやすいからです。
石膏像の鼻を描くときに「これは鼻の陰」「これは鼻の影」と意識するだけでものの見方が変わります。

石膏デッサンは、大小さまざまな陰影の組み合わせです。
鼻よりも頭、頭と首、頭と胴と比べていくことで陰影の大小にも気がつくようになります。
石膏デッサンは、陰影の観察だけでなく石膏像がもつ雰囲気やパーツの位置の正確さが求められるため、デッサンを総合的に学びたいときに適しています。

高度なデッサン「構成デッサン

構成デッサンとは、モチーフを頭の中で構成して描くデッサンです。
美大受験の試験でも頻繁に出題される高度なデッサンです。

例えば「手のデッサン」でも、構成デッサンになると手で何かをつかんでいたり作業していたりする場面を頭の中でイメージして描きます。
手は自分の手をみながら描くことができますが、他のモチーフは頭の中でイメージして描きます。
美大受験の合格者再現作品では、ろうそくに手をかざしている絵も多く描かれていました。
ろうそくの火という蛍光灯や自然光とは違った反射を描く力が必要です。
また、やわらかいものを握りつぶしている手も描かれています。
やわらかいものの質感や陰影すべてを頭の中でイメージするためには、相当の経験が必要です。

構成デッサンの目的は、デッサン力だけでなく構成力やデザイン力も高めることです。

広い視野で大物を描く「静物デッサン」

静物デッサンと卓上デッサンの違いは、モチーフの大きさや置き方です。
自分の机の上にモチーフを置き、じっくりと観察しながら描く卓上デッサンとは違い、静物デッサンは比較的大きなモチーフを台上に組んで複数人で囲うようにして描きます。
組まれたモチーフのサイズは紙よりも大きくなるため、全体を意識して描く力を養うことができます。

静物デッサンの中でもとくに難易度が高いモチーフは植物といわれています。
植物は、石膏像のように決まった形がありません。
多少茎が曲がっても「間違った形」にはみえないでしょう。

しかし植物は細かな葉や茎が組み合わさり無数の小さな空間を作っています。
適当に描いているだけでは遠近感が表現できずゴチャゴチャした絵になります。
静物デッサンの目的は、細かく描くべきところと大きくとらえるべきところを見分けて全体をバランスよく描き進めることです。

デッサンの応用「人物デッサン」

人物デッサンは、すべてのデッサンの集大成です。
静物デッサンの全体をとらえる力、石膏デッサンの陰影を意識する力、単体デッサンの質感表現の力、そして卓上デッサンの空気を描く力と関係を意識する力すべてが必要です。
一見、構成デッサンは関係ないようにみえますが、服を着ている人物を描くためには服の下にある筋肉や骨格をイメージする力が必要になります。

人物デッサンの目的は、デッサンを描くためには表面的な情報だけでなく、筋肉や骨格など「目に見えない構造の理解」が必要であることを知るためです。

おわりに

「デッサンが上達するためにはものをみる目を養え」と言われます。
みる目とは「ここが暗い」「ここは一番明るい」とみることではありません。
「ここは頭と腕の影が重なっているから一番暗い」と意味が分かってみられるようになることです。

デッサンは短期間で上達するものではありませんが、奥が深く描けば描くほどのめり込む魅力があります。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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