大人になってから絵を描き始める人は、実は意外と多いものです。
そして、絵を描くことには「大人だからこそ得られる」メリットがたくさんあります。
もし「今さら絵を始めても遅いのでは」と思っているなら、ぜひ知ってほしいポイントがあります。
今回は、大人になってから絵を描くことで得られる素晴らしいメリットをご紹介します。
目次
自分の意志で始めるから続けられる
大人になってから何かを始める人の多くは、「自分がやりたい」という明確な意志を持っています。
子どものころの習いごとが、親に勧められたり必要に迫られたりして始めることが多かったのとは異なり、大人の選択は自発的です。そのため、絵を描くことが楽しく、長続きしやすいのです。
さらに、大人になってからは画材選びも自分の判断で行います。子どものころに親が用意してくれたものと違い、大人は自分のお金で画材をひとつひとつ揃えることになります。その分、道具に対する愛着や思い入れも深くなるでしょう。
また、絵を描いていると必ず「上手く描けない」「なかなか進歩しない」と感じる時期や、超えるべき壁にぶつかることがあります。
例えば、地味で退屈に感じるかもしれない円柱や四角柱のデッサン。しかし、大人は「壁を乗り越えるために必要な努力」を受け入れる力があります。「楽しくないこともやるべきだ」と思えるのは、大人ならではの強みと言えるでしょう。
指導を理解する力がある
大人になってから絵を描き始める人は、独学で絵を学ぶよりも絵画教室やカルチャーセンターで習う方がいいのかもしれません。
なぜならば、独学は一人で継続する根気が必要だからです。
絵画教室やカルチャーセンターに行けば、同じ趣味をもった先生や仲間たちと出会うことができます。
こうした環境は、絵を描き続けるモチベーションをさらに高めてくれます。
また、大人は言葉の理解力があるため、具体的な指導を深く理解し、自分の絵に活かすことができます。
例えば、球体をデッサンするときに「光源は上からだけでなく、下からの反射もある」という説明を受けたとします。子どもにとっては難しい話かもしれませんが、大人なら「だからこの部分が明るくなるのか」と考え、手を動かしながら応用できます。
技術が向上すると、作品に変化が現れます。その変化に気づくことで「上達する楽しさ」を感じ、さらに成長したいという意欲も湧いてきます。指導を理解し、努力が結果として現れる瞬間を味わえるのは、大人ならではの喜びです。
「自分」になれる時間ができる
大人になると「〇〇ちゃんのお母さん」「〇〇会社の人」というように「自分」ではない肩書がたくさんつきます。
肩書が増えれば増えるほど肩書を意識していまい、自分になれる時間は減っていくものです。
絵を描くことに肩書は関係ありません。
お母さんも取締役もおじいちゃんも「絵を描く人」という肩書だけです。
絵に集中すると、作品と自分だけの時間が流れます。
「自分になれる時間ができる」というメリットは、大人になったからこそわかるメリットではないでしょうか。
経済的な余裕がある
絵は鉛筆1本あれば描くことはできます。
しかし、鉛筆1本で満足できる作品を描くためには、それなりのスキルが必要です。
やはり最初は画材が豊富にあったほうが表現しやすいでしょう。
画材の価格帯は幅広いです。
色鉛筆ならば100円程度で買うこともできます。
しかし実際に使ってみると値段の差を感じます。
「何度塗っても色が濃くならない」「芯がすぐに折れてしまう」ということが続くと描く意欲がなくなってしまうのです。
やはり、発色がよく豊かな表現ができる画材はそれなりの値段がします。
大人は子どもや学生よりも経済的な余裕があることが多く、はじめから好きな画材をそろえられるメリットがあるのです。
スキルがあがれば、欲しくなる筆や絵の具の種類も増えます。
手持ちの画材が増えていく楽しさも大人ならではの楽しみではないでしょうか。
大人になったから表現できる世界がある
大人になってから絵を描く一番のメリットは表現できる世界が大きいということでしょう。
絵を描くことは自分を表現することです。5歳の子どもは、5年間の人生の中で感じた世界感を絵にします。
しかし50歳の大人ならば50年間の人生で感じたことすべてが表現の源になり、表現の幅はうんと広がっています。
さらに大人は、さまざまな視点からものごとを感じる力を持っています。
例えば「雨」というテーマならば、子どもは「長靴や傘」をイメージしますが、大人は「恵みの雨」「豪雨」のようにいい面からも悪い面からも深く考えることができるのです。
「表現できる世界が広い」ということは、それだけ描けることがあるということです。
「子どものころから絵はだめだった」という人でも、大人になった今だからこそ描ける絵があります。
おわりに
「大人になってから絵を始めるなんて」と思う人が多いのかもしれません。
しかし絵を始めることに早すぎる遅すぎるはありません。
むしろ人生経験豊富になった大人だから描ける絵があります。
また絵を描くことによってものの見方が変わります。
今まではナスをみても「食べるもの」としか思わなくても、絵を描くようになると「きれいな紫色」と感じるでしょう。
絵を描くことは、人生を彩り豊かにして自分らしく生きる方法のひとつです。
文筆:式部順子(しきべ じゅんこ) 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業 サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。 在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。