デジタルイラストの魅力を知りたい! 今知っておきたいデジタルイラストのクリエイターとその魅力

デジタルイラストのクリエイターが続々と登場しています。
また、デジタルイラストに挑戦する人も増え続け、デジタルイラストが熱い時代に突入しました。

今回は、すでにデジタルイラストに挑戦している人もこれから始める人も知っておきたい話題のクリエイター2人を紹介します。

見慣れた景色とのギャップがいい「東京幻想」

東京幻想とは、イラスト集のタイトルではなくクリエイターの名前です。
2020年に出版された作品集「東京幻想」には、東京の実在する場所をもとにした作品が掲載されています。
魅力は、実在する風景の中に描かれた架空の世界観です。
架空の世界観ではありますが、絶対にありえない景色とは言い切れない部分が魅力になっているのではないでしょうか。

東京幻想氏は経済学部を卒業し、卒業後に美大受験予備校で絵の技術を学んでいます。
その後に就職したアニメの背景制作会社でデジタルと出会います。
作品を描く工程は、実在する風景を描き起こすことから始まります。
実在する風景を描き起こしたら、東京幻想氏ならではの架空の世界観になるように絵を変化させていくのです。

従来の絵を描く工程ならば、まず頭の中にアイデアを描き、そのあとは完成予想図に向かって手を動かしていました。
スタートからゴールまでは一方通行です。
一方、東京幻想氏の描き方は、まずベースを作って徐々に変化させます。
スタートからゴールまでは一方通行ではなく、行ったり来たりしながら描く「デジタルだからこそできる手法」です。

行ったり来たりできる手法は、これからデジタルイラストを始める人に適しています。
デッサン力が不十分でもベースとなる絵ができれば、あとは自分のアイデア次第で簡単にアレンジすることができるからです。

東京幻想氏の作品は「デッサン力がなければリアルなイラストは描けない」という概念を覆します。

アナログとデジタルの良さが共存「出水ぽすか」

出水ぽすか氏は、マンガ家でありイラストレーターでもあります。
大ヒットした「約束のネバーランド」は代表作であり、独特の世界観が話題となりました。

出水氏の魅力は、アナログとデジタルの良さが共存しているところです。
素晴らしい作品は、使われている画材がわからないものです。
出水氏の作品は、絵の具を使った手描きと言われればそう見えるし、デジタルで描いたと言われても納得できます。
作品を目にすると、独特のファンタジーな世界に引き込まれ、画材に対する意識は吹っ飛んでしまうのです。

デジタルイラスト初心者が描いたイラストは、どうしても「デジタルで描きました」ということが前面に出てしまい、アナログの良さは消えています。
一方出水氏は、作品の基に圧倒的なデッサン力があることがヒシヒシと伝わってくるのです。
迫力ある構図と繊細な線が魅力ですが、違和感なく迫力のある構図にすることは、圧倒的なデッサン力がなければできないことでしょう。
デジタルで描き込むときでも微妙な光の具合や色の使い分けは、デッサン力があってこその結果です。

デジタルイラストというと「きれいに描ける」「簡単に描ける」イメージがありますが、出水氏の作品は、アナログとデジタルの良さを抜き出した「一歩進んだデジタルイラスト」である気がします。

デジタルイラストの魅力とは

紹介した2人のクリエイターから感じるデジタルイラストの魅力とは「誰でも絵を描く夢が叶えられる」と「アナログ以上デジタル以上の絵が描ける」ではないでしょうか。

イラストは、子どもから大人まで楽しめる美術です。
東京幻想氏の作品は、独創的な世界観が、デジタルで描くことでよりリアルな表現になっています。
ゲームが好きな子どもたちは、作品の中にゲームの世界観を感じるのかもしれません。

出水氏の作品は「絵はアナログで描いてこそ作品になる」という筆者の概念を覆しました。
アナログとデジタルと2つに分けて考えること自体が時代遅れだったのです。
アナログの良さとデジタルの便利さを上手に利用することで、アナログ以上デジタル以上の作品を生み出すことができます。

最近はAIが話題です。
AIは人間が生み出したものですが、いずれはAIが人間を超えてしまうのではないかと心配する人がいます。
デジタルイラストも同じことかもしれません。
デジタルはアナログの次に生まれた手法ですが、デジタルに頼りすぎるとアナログの良さが消えてしまい、デジタルの枠組みの中で描ける絵で満足するようになります。
本当のデジタルイラストの魅力を追求するならば、アナログとデジタルを分けて考えるのではなく、アナログとデジタルの2階建てで考えるといいのではないでしょうか。

デジタルで絵を描くことが主流になれば「絵を習うこと=アプリの操作を学ぶこと」と考えてしまうかもしれません。
しかし、絵を描くことは手法に関係なく感性とアイデアが一番大切です。
絵を習うことは「感性を育てながら表現にあった操作方法を習うこと」なのではないでしょうか。

おわりに

東京幻想氏はインタビューの中で「絵は自分にとって心のバランスを保つための一要素に過ぎない」と答えています。
デジタルイラストが普及することで、多くの人が思い通りの絵を描くことができるようになりました。
絵は忙しい現代人の心のバランスを保つ一要素になります。
忙しい人こそデジタルイラストに挑戦し、アナログだけでは叶えられなかった夢を実現してみてはいかがでしょうか。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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