絵やイラストの上達にデッサンは欠かせません。
そのため独学でデッサンを勉強している人も多いようです。
デッサンは「描けば描くほど上達する」と言われていますが、上達するように描かなければただの作業になってしまいます。
今回は、独学でデッサンを学んでいる人が感じることから「限界サイン」をみつけ、対処方法をお話しします。
目次
「モチーフをよくみる」の意味が分からない
独学でデッサンを描いている人は、市販されているデッサン教本や無料動画を参考にしているかもしれません。
デッサンの指導の中で頻繁に出てくる言葉が「モチーフをよくみる」です。
デッサンは、目の前にあるモチーフをそのまま描くことです。
オリジナル要素よりも正確性が求められます。
そのため「モチーフをよくみる」は、基本的なことでありデッサンの要です。
「モチーフをよくみる」という意味は、目を大きく開けてジーッと眺めることではありません。
独学でデッサンを描いている人は「よくみる」の意味を正しく解釈することができず、
スランプに陥ってしまうことがあるのです。
もしも「モチーフをよくみる」の意味がわからずスランプに陥っている状況ならば、
それは限界サインかもしれません。
正しく意味を理解し、一皮むけることでデッサンのスキルは格段に上がるでしょう。
描きたいモチーフがわからない
デッサンを絵画教室で描くときには、生徒のスキルや目的に合ったモチーフを選びます。
美大受験予備校でも同じです。
芸大を受験するならば水の入った水槽に入れられた植物や構成デッサンなど難易度が高いモチーフを描きます。
私大系の美大を受験するならばレンガや樽、瓶や布のように質感の違いがあるモチーフを多く描きます。
一方、独学でデッサンを描いている人はモチーフも自分で選ばなければなりません。
最初はリンゴや花瓶など一般的なモチーフを描いていても、
徐々に何を描いたらいいのかわからない状況になることがあります。
わからない状況は意欲を奪ってしまいます。
描きたいモチーフがわからないということは「自分がこれから何を描けばいいのかがわからない」ということです。
それは限界サインかもしれません。
たくさんのデッサンをみると「こんなモチーフもアリなのか」と思うことがあるでしょう。
そして自分の不得手とするモチーフや描いたことがないモチーフを知ることができます。
これからの自分に必要なスキルや克服すべきモチーフをみつけることがデッサンのスキルを向上させるでしょう。
描いても描いても満足できない
デッサンは、ぬり絵のようにはっきりとした終わりがありません。
自分自身で終わりを決めなければなりません。
そのため、描いても描いても作品に満足できない状況が続いているならば、
自分で終わりがみつけられない限界サインかもしれません。
デッサンにも終わりはあります。
終わるはずの段階を過ぎてしまうと、色の幅がなくなり平面的になります。
デッサンの終わりがわかるようになるためには完成形のイメージをもつことが必要です。
もしも描いても描いても満足できず終わりがみえないならば、描くスキルを向上させるだけでなく、
お手本になる作品をたくさんみて完成形をイメージできるようにすることが大切です。
自分では「完璧なデッサンだ」と思うことが増えてきた
独学でデッサンを描いていて「完璧なデッサンだ」と思うことが増えてきたのならば、
それは自分で改良点がみつけられなくなっているのかもしれません。
改良点がみつけられない状況は、これ以上自分の力だけでは成長できない限界サインです。
完璧なデッサンはなかなか描けません。
なぜならば、完璧なデッサンは写真や実物以上にモチーフの本質を描いているからです。
「写真のようにみえるデッサン」「実物そっくりのデッサン」は完璧とはいえません。
それは上手なデッサンです。
完璧なデッサンとは、モチーフの香りや重さ、性格や音まで伝えられる「絵」です。
そこまで完璧なデッサンを独学で描けるようになることはとても難しいことではないでしょうか。
独学でデッサンを描くことに限界を感じたときの対処方法
独学でデッサンを描いているときに限界サインを感じたときには、早めに対処しましょう。
なぜならば、限界の状態は苦しい状態です。
苦しい状態が続けば、人は苦しい状況から逃げたくなります。
上達のために描いてきたデッサンが原因で絵から逃げるようなことになれば本末転倒です。
デッサンは「絵の訓練」と思われることがありますが、本当は絵を描くことであり楽しみながらできることです。
「モチーフをよくみる」の意味がわからないならば、わかりやすく説明ができる先生から指導を受けましょう。
絵画教室では、ひとり一人に適したモチーフを選ぶこともできます。
そして、絵画教室では参考作品やお手本作品など自分よりも完成度の高い作品をみることができます。
「自分の作品にはまだまだ描くべきところがあった」と一目瞭然でわかるようになるでしょう。
完璧なデッサンは、絵画教室でも簡単に出会うことはできないかもしれません。
ただ、絵画教室では小手先では理解できない理論や奥深さを学ぶことができます。
本当に美術が好きで学び続ける生徒やプロの先生と接する環境にいることで「完璧なデッサンとはどのようなものか」を知ることはできるのではないでしょうか。
おわりに
独学でデッサンを描く人は、相当絵や美術が好きな人です。限界サインを感じたら、デッサンへの情熱がさめる前に対処しましょう。限界を突破した先には一皮むけたデッサンが待っているでしょう。
文筆:式部順子(しきべ じゅんこ) 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業 サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。 在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。