「家にいるときにはゲームか動画しかみない」という子どもも多いようです。昔は、出先の暇つぶしといえば「紙とペン」でしたが、最近の暇つぶしはスマホやタブレットでゲームが定番でしょう。「絵が好きな子どもにしたい」「ゲームや動画だけでなく絵を描かせたい」と思っている人も多いのではないでしょうか。
今回は、今すぐできる「絵が好きな子どもにするためにできること」をお話しします。
目次
子どもの作品は「しまっておく」より「貼っておく」
絵が好きな子どもにするコツは、否定せず認めることです。
子どもが絵や作品を持ち帰ったとき、どのようにしているでしょうか。
最近はスマホで撮影してデータにして保管する家庭もあります。
きれいに丸めてダンボールに保管する方法もあります。
おすすめは、家のリビングや玄関に貼ることです。
どんなに大切に保管しても、ダンボールや押し入れの中に入れてしまえば見る機会は減ります。
子どもに「大切に保管しているよ」と伝えても、一度しまってしまうと次に目にするときには大人になっているかもしれません。
子どもは、自分の作品が人の目に触れる場所に飾られることで「認められた」と感じることができるのです。
子どもに限らず、大人でも褒められたり認められたりするとやる気が出ます。
飾られた作品は、次の作品への意欲につながるのです。
ポイントは「飾る」ではなく「貼る」です。
「飾る」となると、額縁を用意したり場所を選んだりしなければなりません。
手間が増えると、どうしても継続できないものです。
きれいに飾るのではなく、持ち帰ったらすぐに「これいいね」と言ってテープでペタッと冷蔵庫やふすまに貼ってみましょう。
有名な作品は知識でみるよりユーモアでみる
絵が好きな子どもにしたいから「美術館に連れていく」や「絵に関する本を読ませる」という人もいます。
しかし、小さな子どもを美術館に連れて行っても「静かにしなさい」「走らない」と言って終わってしまうでしょう。
楽しい思い出どころか二度と行きたくない場所になってしまうかもしれません。
子どもは楽しいことが大好きです。
絵に興味を持たせるためには、知識よりもユーモアのほうがいいでしょう。
筆者の子どもは、イラストやアニメは好きですが、有名な絵画作品にはまったく興味がありませんでした。
ゴッホやセザンヌは教科書の中の人であり、作品名はテスト用に覚えるものでしかありませんでした。
まさに「美術=知識」だったのです。
しかし書籍「#名画で学ぶ主婦業」(宝島社)をきっかけに、名画に興味を持ったのです。
書籍「#名画で学ぶ主婦業」は、美術の教科書に出てくるような名画ばかりが掲載された本です。
ただ、添えられたコメントがユニークです。
ミレーの名作「落穂ひろい」は、貧しい農民の姿を描いています。
ユーモアとは正反対の作品です。
しかし「#名画で学ぶ主婦業」には、子どもがいる家庭ならば思わず笑ってしまう言葉が添えられているのです。
「「落穂ひろい」は笑って鑑賞するような作品ではない」という固定概念が崩れ、筆者も思わず笑ってしまいました。
「絵が嫌い」「美術が嫌い」という子どもは「美術=まじめ」というイメージがあるのかもしれません。
名画を身近にする方法がユーモアです。
セザンヌの果物の絵をみたとき「これは有名な絵よ」ではなく「これは完熟ね」と言えば、子どもは興味を持つのかもしれません。
親が絵を描いてみる
子どもは親のやることに興味津々です。
それが非日常なことであればなおさらです。
子どもに絵を描かせたいならば、まず親が絵を描いてみましょう。
上手下手は関係ありません。
描くモチーフは、アニメでも目の前にあるティッシュ箱でもかまいません。
親が集中して絵を描いている姿が子どもの好奇心を刺激します。
子どもにとっては、美術館に飾ってある絵よりも、親が広告の裏に描いた絵の方がおもしろいはずです。
「絵を描く」というと画用紙を買ってきて絵の具の準備をするイメージがあります。
しかし絵を日常に取り込み、身近にすることが子どもと絵の距離を縮めるコツです。
例えば、子どもに書置きをするとき「おやつは冷蔵庫の中」という文字だけでなく、簡単なイラストを付けます。
プリンやドーナツは描きやすいでしょう。
笑っている顔や吹き出しをつければストーリーが生まれます。
ちょっとした絵を添えるだけで、それはメモではなくプレゼントになるのです。
おわりに
「絵より勉強をしてほしい」と思うかもしれませんが、最近はクリエイティブな発想がさまざまな方面で必要とされています。
脳は右脳と左脳があり、それぞれに役割があります。
知識の勉強は左脳、絵を描くことは右脳が主に力を発揮しているそうです。
右脳と左脳のどちらもバランスよく使うことが一番いいのではないでしょうか。
絵が好きな子どもにするためにできることは塾でも学校でもなく、家庭の生活の中にあります。
文筆:式部順子(しきべ じゅんこ) 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業 サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。 在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。