子どもが喜ぶ! 「子どもの好奇心をくすぐる絵」4選

「子どもに有名な絵をみせることがいい教育」と思っている人は多いのではないでしょうか。
しかし、小中学生に美しい風景画や肖像画をみせても本当に感動できる子どもはごくわずかではないでしょうか。
多くの子どもはユーモアがあったりワクワクできたりする作品に惹かれるのです。

今回は、子どもが喜んで絵に接することができる作品「子どもの好奇心をくすぐる絵」を4つ紹介します。

よくみると人がたくさん! 「第22回アンテパンダン展に参加するよう芸術家たちを導く自由の女神」アンリ・ルソー

題名とは思えないほど長い題名をもつ作品です。
パッとみると空に自由の女神がいて、手前に数人の画家たちが作品を手にして入り口に向かっている様子にみえます。
ポスターのような平面的な描き方で、とくに大人がみたら「素晴らしい」とは思えないかもしれません。

しかし、この作品をよく見ると木の下に無数の人たちがいることに気がつきます。
一見「柵」のようにみえますが、実は展覧会に出品する作品をもって並んでいる画家たちが描かれているのです。

「アンテパンダン展」とは、実際にあった展覧会で素人でも出品できる展覧会でした。
この作品を描いたアンリ・ルソーは絵を専門的に勉強したことはなく、独学で絵を描き続けた人です。
そのため周囲からは素人としてみられることもありました。

しかし当のルソーは、そんなことは気にもせず、アンテパンダン展に作品を出品し続けたのです。
この作品にはルソー自身も描かれています。
展覧会の主催者と握手をしている人物がルソー本人です。
他人の目を気にせず、絵を描くことを楽しんでいることが伝わってくる明るい作品です。

子どもは、技法や画家名ではなく絵を直観でみます。
木の葉が無数の点で描かれていること、なぜか入り口にライオンが寝そべっていること、柵のようにみえる多くの人たちなど、ルソーのこだわりと突拍子もない構成に子どもたちは惹きつけられるでしょう。

コラージュで挑戦「四季」ジュゼッペ・アルチンボルド

「四季」は、春夏秋冬の一連の作品です。それぞれ季節にあったものを組み合わせて肖像画になっています。
春は花、夏は夏の食べ物、秋は実、冬は木で構成され、写実的な絵画ですが非現実的でユーモアがあります。

ジュゼッペ・アルチンボルドの作品は、鑑賞するだけでも子どもの好奇心をくすぐりますが、コラージュで作る楽しむこともできます。
野菜や果物の写真を集めて組み合わせれば、絵に苦手意識をもっている子どもでもアルチンボルドの世界感を表現することができるでしょう。
雑誌の切り抜きや写真を組み合わせて作品を作ることをコラージュといいます。

コラージュは、筆や絵の具を使って絵を描くのではなく、切り抜きと糊があればだれでも描ける手法です。
画力に自信がなくても素材をしっかりと集めることができれば、完成度の高い作品になるでしょう。

ジュゼッペ・アルチンボルドの作品は絵が苦手な子どもに「絵を作ること」で自信と楽しさを与えてくれるのではないでしょうか。

どうなっているの!? 「空と水」マウリッツ・エッシャー

エッシャーの作品には「鳥の絵かと思ったら、魚の絵になっている」「上かと思ったら下になっている」という不思議なカラクリがあります。

子どもは、鑑賞するだけでなく自分が参加できる作品に興味を持ちます。
「どこから魚に変わった? 」「どこから水が出ている? 」と考えるだけでも好奇心が生まれます。

錯視を利用したアート「トリックアート」は、大人も子どもも楽しめる美術です。

ストーリーのある魅力「ブラックベア」ディック・ブルーナ

子どもと絵を鑑賞するとき、その背景に注目することがポイントです。
背景とは、目に見える背景ではなく「理由」です。

ミッフィーで有名なディック・ブルーナの作品に「ブラックベア」という作品があります。
真っ黒い熊でオレンジ色の目が印象的ですが、子どもの視点でみるとオレンジ色の目に違和感があるかもしれません。

ブルーナの作品は、シンプルながら洗練されたデザインで無駄なことが一切ありません。
「ブラックベア」のオレンジ色の目にもオレンジである理由があります。

この黒い熊は、本が大好きで深夜まで本を読んでしまい目が充血したという設定なのです。
「好きなことに没頭してしまう」という子どもとの共通点があり、子どもは理由を知ることで、一気に親近感をもちます。
ミッフィーの口はバツで描かれていますが、これにも理由があります。
ブルーナがウサギをみたとき、口のあたりがバツにみえたことからミッフィーの口はバツで描かれたといわれています。

そう言われれば、たしかにウサギの口のまわりは鼻とつながる線がバツにみえるのです。
絵に正しい表現はありません。ブルーナの作品には「自分が感じたままを描けばいい」というメッセージが込められている気がします。

おわりに

紹介した作品は、子どもだけでなく「絵って難しい」と思っている大人にもおすすめの作品です。絵や美術は知識で鑑賞するものではありません。「なんかおもしろい」「この人の作品をもっとみたい」と感じることができれば「鑑賞できた」と言えるのです。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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