子どもに「絵を習いたい」と言われたときの対応ポイント

子どもから「絵を習いたい」と言われたら、どう対応すればよいか悩む親御さんも多いのではないでしょうか。絵は英語や書道のように資格試験があるわけではなく、どれくらい続ければいいのかも明確ではありません。また、どこで習わせるべきか、いつまで続けさせればいいのかも分かりにくいですよね。

なにより、どこに習いに行かせればいいのかもわからないものです。
ここでは、子どもに「絵を習いたい」と言われた際に考えるべきポイントを、わかりやすく5つの項目に分けて詳しく解説します。それぞれの項目について具体例を交えながら説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。

「続けられるか」を考えすぎず、まずは楽しむことを重視する

子どもが「どうせすぐやめるんでしょ?」と親に言われたら、せっかくの興味ややる気がしぼんでしまうかもしれません。子どもの意欲を尊重することが大切であり、たとえ短期間で終わってしまうとしても、その経験がどのような形で子どもの成長につながるかはわかりません。子どもが何かを始めたいと言ったとき、親は「続けられなかったら無駄になる」と感じがちですが、それは必ずしも正しい考え方ではありません。

絵を習う目的は、英語やピアノのように級や資格を取得することではなく、純粋に「絵を楽しむ」ことにあります。絵を描くことを通じて創造力や表現力が養われると同時に、日常生活に新たな楽しみが生まれるのです。たとえ絵を習うことが職業につながらなくても、絵を楽しむこと自体が子どもの人生にとって大きな意義を持つでしょう。

そのため、子どもが「やってみたい」と思ったときは、まずその気持ちを大切にしてあげることが重要です。「やってみて楽しめるかどうか」を優先し、長続きするかどうかは二の次に考えてください。一度でも絵を描く楽しさを知ることで、人生の中で豊かな経験として残る可能性があります。

子どもの発達に応じた絵画教室を選ぶ

絵画教室を選ぶ際には、子どもの発達段階に合った教室を選ぶことが最も重要です。子どもによって、座って集中することが得意な子もいれば、じっとしているのが苦手な子もいます。そうした個性や発達の違いを踏まえたうえで、適切な教室を見つけることが、子どもが絵を楽しむための大きなポイントとなります。

例えば、じっと座って描くことが苦手な子どもには、先生が多く配置され、個別にサポートしてもらえる教室が適しているでしょう。一方で、絵を描くことに慣れていて、自分なりのペースで描ける子どもには、自由度の高いクラスが良いかもしれません。また、年齢が小さくても技術力がある場合には、柔軟にクラスを変更できるような教室を選ぶのも一つの方法です。

一方で、親としては、より高度なスキルを身につけられる教室に通わせたいと思うこともあるでしょう。しかし、子どもの発達よりも高いレベルのクラスに入れてしまうと、描けないことへのフラストレーションが生まれ、結果的に絵を楽しむことが難しくなるかもしれません。子どもの成長段階に合った環境で、絵を描く楽しさをしっかりと味わえるようにしてあげることが大切です。

また、幅広い年齢や目的に応じたクラスが展開されている教室であれば、子どもが成長したあとも通い続けることができ、長期的な学びの場として最適です。教室選びの際には、カリキュラムの内容や指導方針も確認しておくとよいでしょう。

家庭内でも絵が描ける環境をつくる

子どもが「絵を習いたい」と言うということは、絵に興味を持っているということです。
そして、もっと絵を習うことで幅広い表現や描き方ができるようになりたいと思っています。

絵画教室をすぐに探し始めたとしても通うまでには時間がかかります。
すぐに自宅の中で絵を描く環境をつくってあげましょう。
「描きたい」と思う気持ちが強いときに絵をどんどん描くことで、絵に対する興味もどんどん上がっていくでしょう。

絵が描ける環境とは、アトリエを設けることではありません。
ダイニングテーブルのはじに色鉛筆と画用紙を常に置いたり、壁に模造紙を貼ったりするだけです。

親も一緒に興味をもつ

しばしば子どもが「絵が好き」というと、「私は絵がダメ」と言ってしまう人がいます。
大人になると「自分は絵が苦手」と感じる人は多いのですが、子どもに対して「私は絵がダメ」と言ってしまうと、子どものテンションは下がってしまうでしょう。
子どもにとっては、親の絵がうまいか下手かは関係ありません。
ただ一緒に絵を楽しんでほしいのです。

子どもが「絵を習いたい」と言ったときには「絵を描くのは苦手だけど美術館は好き」「お母さんも犬なら描けるよ」と一緒に絵に興味をもってあげると子どもはうれしいのではないでしょうか。

子どもにとって、親の姿勢や言葉は想像以上に大きな影響を与えます。
親が一緒に楽しみたいという姿勢をみせるだけで、子どもはより強く「やってみよう」と思うものです。

「やめたい」と言われたら無理強いしない

子どもに限らず、習い事を続けているとやめたくなるタイミングがあります。
やめたいと思うタイミングや理由はさまざまです。

解決できる理由ならば解決して続けた方がいいのですが、受験や体力的な問題ややる気の問題で「やめたい」と言ったときには無理強いしないほうがいいでしょう。

筆者の子どもは小学校入学から絵画教室に通っていましたが、中学校入学と同時にいったんやめました。
高校は普通科を希望したからです。

そして本人が「このまま受験科に進んで絵三昧になったら絵を嫌いになりそうだ」と言ったからです。
小学校の6年間を通い続け、絵を描く楽しさはしっかりとわかっていました。

そのため、いったん絵画教室から離れて、いずれ絵の道に進みたいと思ったときに再び戻ることにしたのです。

大人でも子どもでも「もういやだ」と心底思うまでやってしまったら、二度と戻りたいと思うことはないでしょう。
「好きでい続けたいからいったん離れる」という選択を許すことも絵を長く続けるためのポイントです。

おわりに

絵を習い、絵を描く楽しさを体験することは、人生にゆとりを与えてくれます。
大人がいくら「絵を習った方がいい」と言っても、絵に興味がない子どもは習いたいと思いません。

子どもから「絵を習いたい」と言われたときには、絶好のチャンスと思い、ぜひ絵を習う機会を作ってあげてほしいと思います。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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