大人が趣味で絵画教室に通っていると「贅沢な人」と思われるのではないかと思ったことはないでしょうか。
実は、大人の絵画教室には現実的なメリットがたくさんあります。
今回は、大人が趣味で絵画教室に通うことが、単なる贅沢や娯楽ではない3つの理由をお話しします。
目次
「趣味をもつこと」は将来の自分への投資だから
子どもの習い事に比べて、大人の習い事は経済的にも時間的にも余裕がある人がやることと思われがちです。
たしかに、大人の習い事はゴルフや着付けなどお金がかかるものも多くあります。
しかし、大人が趣味で習い事をすることは、子どもの習い事とは全く違った意味があるのです。
子どもは、スキルをみにつけるために習い事をします。
一方の大人は、将来の自分に投資をするために習い事をします。
「将来の自分は高齢者になっているだけ」と思う人がいるかもしれません。
将来、高齢になった自分のために投資をすることは、実はとても大切なことです。
仕事ばかりで趣味がなく、友達もいない人が定年退職後に無気力になったり、イライラしたりする話をよく聞きます。
将来の自分に備えて趣味をもち、投資をしておくことは贅沢ではなく、老後の面倒は自分で見るための準備であり投資ではないでしょうか。
絵画教室はコスパのいい習い事だから
老後の自分のためといっても、使えるお金には限界があります。
ゴルフは運動も仲間作りもできる趣味ですが、どうしてもお金がかかります。
着付けもステキな趣味ですが、着物が必要であり、着物を着て出かける場所が必要です。
一方、絵画はコスパがいい趣味です。
はじめは道具や画材をそろえるためにお金がかかりますが、一通りそろえてしまえばランニングコストは紙代くらいです。
絵は、体が思うように動かなくなっても、室内で続けることもできます。
また絵画教室に通うことで友達もできます。
通常の教室は、ひとり一人個別の作業です。
しかし、大人の絵画教室では、グループ展も開催されます。
ひとつの目標に向かってみんなで力を合わせることで、前向きな気持ちになることができます。
適度な距離感を保ちつつ、長く付き合える友達ができやすいことも大人が絵画教室に通うメリットです。
副業にすることもできるから
大人が趣味で絵画教室に通うことが贅沢だと考えられた時代は、少し前の話です。
今は、どんなスキルでも得意なことがあれば、それをビジネスにするチャンスがあります。
趣味で描きためていた作品を子や孫がSNSで発信し、有名になった人もいます。
個展の開催だけでなく、話題になった作品をグッズにして販売し、副業となっています。
また、最近はメールだけでなく、iPadを使って絵を描いたり写真を撮ったりすることが当たり前になっています。
iPadは、パソコンのようにキーボード操作をしなくても、感覚で操作できる特徴があります。
大人や高齢になってからでもチャレンジしやすいのではないでしょうか。
iPadで描くデジタル画は、絵画教室に通学しなくてもオンラインでレッスンを受けやすいメリットがあります。
足や腰が悪くて自宅から出ることが難しい人でも絵画教室は、オンラインで学べるメリットがあります。
単なる贅沢にしないための注意点
大人が趣味で絵画教室に通うことは贅沢なことではない理由をお話ししましたが、落とし穴もあります。
ここからは、単なる贅沢にしないために気をつけたいことを2つお話しします。
<目標をもつ>
目標をもたずに続けていると、絵画教室に通う目的が「向上」ではなく「娯楽」に流れてしまう傾向があります。
娯楽の要素が強くなると、どうしても贅沢なことという印象が強くなります。
小さな目標でも目標をもつことで刺激は強くなり、より多くのメリットを感じることができます。
目標は、日展や二科展のような大きな美術展を目指すのではなく
「孫の入学祝に絵をプレゼントする」や「教室の定期作品展に出品する」という実現可能な目標で十分です。
先生と相談して、楽しみながら目指せる目標を設定してみてください。
<作品以外で張り合わない>
大人の習い事は、絵画教室に限らず目的とは全く関係がないことで張り合いが始まってしまうことがあります。
孫の進学先や就職先、しまいには教室に着ていく服など、気にすればきりなく気になるものです。
張り合いが始まってしまうと、余計なパワーが必要です。
心もお金も消費することになれば、贅沢どころか浪費になってしまいます。
絵画教室では、作品だけで張り合い、それ以外のことはノーサイドです。
おわりに
大人が趣味で絵画教室に通うことにはさまざまなメリットがあります。絵を描くことは芸術活動であり、芸術活動は五感を刺激します。贅沢とは、必要以上のものやことにたくさんのお金を浪費することです。芸術活動をする場である絵画教室は、大人にとって贅沢な場所ではなく、身も心も長く健康に過ごすために必要な栄養補給場所なのではないでしょうか。
文筆:式部順子(しきべ じゅんこ) 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業 サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。 在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。