これはダメ! 子どもの作品にNGなコメント4つ

子どもが絵や工作を見せにきたとき、どんなコメントをしたらいいのか迷うことがあります。
実は、大人のコメント次第で子どもの「作りたい気持ち」「描きたい気持ち」は大きく影響されるのです。

今回は、子どもの作品対して言ってはけないNGなコメントを4つ紹介します。

一番多いNGコメント「うまい」

「とりあえず子どもは褒めておけば満足していい方向にいくのではないか」と考える人が多いのではないでしょうか。
そんなときに出やすいコメントが「うまいね」です。

「うまい」は漢字で書くと「上手い」になります。
つまり「上手に描けている」とコメントしたことになるのです。
子どもの絵に上手いも下手もありません。
子ども一人ひとりが自分の個性を発揮できていれば、たとえ「何を描いたかわからない絵」でも素晴らしい作品です。

子どもの作品に対して「うまい」とコメントすると、子どもは「この絵はよく描けたのか」と思います。
大人に「うまい」と言われたことで認められたと感じ、次からは大人に認められるような絵を描こうと思う可能性があるのです。

「うまい」というコメントには、一見「認めた」という前向きなイメージがありますが、実は「合格」「よくできました」という印象を与え、子どもの個性を標準化させてしまう落とし穴があります。

もしも、子どもの作品を褒めてあげたいと思ったならば、ただ「うまい」というのではなく、具体的に褒めるべきです。

例えば「大きく描いていて迫力あっていい」や「熊の目がいきいきしていてうまい」と褒めれば、子どもは自信をもつことができるのではないでしょうか。

自己肯定感が育たない「普通は違うよね」

「普通は違うよね」というコメントは、子どもを思う気持ちが強い人ほど言ってしまうコメントです。
子どもを思うがために「変な子と思われたくない」と思ってしまうのです。

ふたりの小学生が夏休みに梨狩りに行った思い出を絵に描きました。
一人は、写真で写したようにきれいに描くことができました。
梨の大きさも梨をもぐ人や手のバランスも整っています。
もう一人の小学生は、画面いっぱいに梨をつかんでいる手が描かれ、大きすぎる梨の後ろに梨と同じ大きさの人間が描かれています。
梨をもいでいる人の目も口も見開いていて、顔の大きさに対してかなり大きく描かれていました。
まるで絵本の「おおきなかぶ」を梨に置き換えたような作品です。

結果は、後者の作品が入選しました。
前者のバランスが整った作品を描いた子どもは、小学校高学年であり「普通」を理解している年齢です。
後者の子どもは低学年だったため、まだ「普通」にとらわれることなく自分の感動をそのまま画面にぶつけたのです。
自分の小さな手でつかめないほどの大きな梨とそれをもぎとったときの喜びが作品から伝わってきました。

大人は、できれば自分の子どもを普通の枠に収めたいと思うのかもしれません。
しかし作品は普通の枠に収まらない方がいいのです。

子どもは成長の過程で否が応でも「普通」を知ります。
幼い子どもの純粋な感情をそのまま育てるためにも「普通は違うよね」というコメントは避けた方がいいでしょう。

やる気をなくすNGワード「前の方がよかった」

これは、筆者の実体験から「言わない方がよかった」と思ったNGワードです。

ある日、子どもが以前に描いた絵に満足できず、同じモチーフで再び挑戦して仕上がった絵を見せにきました。

たしかに、より実物にちかく描けてはいたのですが、きれいにまとまりすぎていて刺激がたりなかったのです。
そこで筆者は「前の方がよかった」と言ってしまったのです。
そのとたん、子どもの表情は曇り、新しい作品を嫌いになってしまったのです。

「子どもをほかの子どもと比べてはいけない」ということは有名な話です。
しかし、子どもの前と後を比べることもよくないのかもしれません。子どもは「今の自分」を見てほしいのです。
子どもからみれば、前の自分や将来の自分もほかの子どもと比べられることと同じように感じ、やる気をなくしてしまうのでしょう。

作品への愛がしぼむ「〇〇に似ている」

子どもは、絵本でみた絵や誰かの作品をお手本にして描くことがあります。
堂々と隣に並べてお手本にしなくても、頭の中にたまっている記憶をつなぎ合わせて作品を作ることがあります。
そうすると、なにかに似ている作品になることがあるのです。

大人は、パッと子どもの作品を目にしたときに「あっ、あれに似ている」と気がつきます。
しかし、それをそのまま口に出してはいけません。

子どもは「似ている」と言われたとたんに自分の作品との間に距離を感じ、愛がしぼんでしまうのです。
子どもがお手本にしたり影響を受けたりした作品は、その子の興味に合っていることを意味しています。

「あの人の作品に似ている」と思ったときには、口に出さずに作家の展示会に連れて行ったり、似た作風の画集を買ってあげたりするといいでしょう。

おわりに

子どもの作品に対するコメントはとても難しいです。
たった一言が子どもの将来に影響したり、傷つけたりします。
絵画教室では、多くの経験をもつ先生が個性にあったコメントを伝えてひとり一人のやる気と感性を引き出します。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

関連記事

関連記事