外出が難しい高齢者が絵を習うメリットとおすすめの習い方

高齢になると、体調に関係なく足腰が弱って長時間歩けなかったり、トイレが心配で外出が難しくなったりします。
家に居れば安心ですが、それでは生活にハリや刺激がありません。

今回は、さまざまな事情で外出が難しくなっている高齢者に絵をすすめる理由とおすすめの習い方をお話しします。

外出が難しい高齢者が絵を習うメリット

高齢者に適した習い事はたくさんあります。
しかし、多くは「自分で動けること」が前提です。
絵はハードルが低い習い事であり、外出が難しい高齢者にとって多くのメリットがあります。

まずは、外出が難しい高齢者が絵を習うメリットを5つお話しします。

<日常で活用できるスキルが身につくことでやりがいを感じる>

絵は、日常で活用できる習い事です。
絵といえば、額縁に入った物々しい美術品が思い浮かびますが、絵手紙やメモに添えたイラストも立派な絵です。
体が元気なときには、語学を習って海外旅行、ダンスを習って発表会に出ることがやりがいにつながります。
しかし外出が難しい高齢者には「日常で活用できること」がやりがいになるのです。

絵は、アイデア次第で活用の幅が広がります。
孫に送る宅配便に一枚の絵を添えれば、お金では買えない贈りものになります。
客観的な評価が欲しければ、コンクールに出品することもできます。
絵は、家に居ながらにして生活にハリを与え、刺激にもなる習い事です。

<楽しみながら脳や手先を使うことができる>

足腰が弱くなると長時間立っていることも難しくなり、台所に長時間立って調理することも大変です。
つい簡単に作れる料理が増え、手先を使う機会が減ります。

絵は、脳と手先を駆使します。
絵のアイデアを考えるだけではなく、色を塗る順番を考えたり、
必要な道具を準備したりと料理に似た忙しさがあるのです。
料理は好き嫌いがあります。
料理が嫌いな人は「自分の分だけなら作る気がしない」と言います。
しかし絵は、好きだから楽しみながら続けることができるのです。

脳トレや指の運動は、高齢者に人気です。楽しみながら脳や手先を使うことは、
健康に年を重ねる大切なポイントでしょう。

<社会とのつながりができる>

絵はひとりで描き、コンクールに出品することもできます。
しかし、一枚の絵を描き上げるまでには意外と忍耐と努力が必要です。
最初は意気込んで描き始めたものの、途中で描き進められず投げ出してしまう人はたくさんいます。

「絵を習うこと」は、絵を描くだけでなく社会とのつながりができます。
コンクール出品を目標とするならば、先生に目標を伝えることで簡単にあきらめられない状況になるでしょう。
さらに途中で描き進められなくなったら、適切なアドバイスをもらい乗り越えることができます。

外出が難しくなると、社会どころか近隣の人との交流も減ってしまいます。
社交的な人ならば散歩のついでに出会った人と雑談をすることもできますが、
そうでない人は丸一日だれとも口をきかない日があることも珍しくはないのではないでしょうか。

絵を習うことで自宅に居ながらにして外部との交流が生まれるのです。

<必要なものがインターネットでそろえられる>

習い事を始めるときには、準備するものがあります。
絵は、必要なもののほとんどをインターネットでそろえることができます。
大手画材店はオンラインショップが充実し、専門的な画材も自宅に取り寄せることができます。

外出が難しい高齢者にとって画材店まで足を運び、必要なものをそろえることはハードルがかなり高いことです。
オンラインショップの充実は、高齢者が習い事を選ぶうえで大切なポイントです。

<家族の負担が少ない>

高齢者が新しいことを始めるときに気にすることが家族の負担です。
家族の手助けが必要になれば、習っている時間は家族にも負担がかかります。

絵は、転倒のリスクやケガの心配が少ない習い事です。
必要な道具も少ないため、準備と片付けも簡単にできます。
「外出ができなくなった」という事実は、それだけで自信を奪います。
家族に負担をかけず「自分で完結できる習い事」は「私ひとりでできる」と前向きな気持ちになれるメリットもあります。

外出が難しい高齢者におすすめの絵の習い方

外出が難しい高齢者には、自宅でのオンラインレッスンをおすすめします。
オンラインレッスンならば、移動やトイレの心配もありません。
また、ZOOMをはじめとしたオンラインミーティングに慣れれば、習い事以外にも輪を広げることができます。
仲間ができればオンライン飲み会やお茶会を楽しむこともできます。

絵画教室の多くはコロナ禍をきっかけにしてオンラインレッスンを開始しています。
動画配信のレッスンとは異なり、同時中継で相互に会話をしながらレッスンを受けることができるため、
通学と同様の臨場感と刺激を味わうことができます。

おわりに

コロナ禍は、多くのことができない状況になりましたが、一方で急速に発達したこともあります。
オンラインレッスンもその中のひとつです。
オンラインレッスンが急速に発達したことで、習う場所を選ばずにどこでも絵を習うことができるようになりました。

外出が難しくなると物理的に外には出にくくなりますが、オンライン上では何歳になっても心配することなくどこへでも出かけることができます。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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