【シニアの絵画】俳画で自分の心を絵と言葉で表現できる! 俳画の基礎知識から表現方法まで

手紙に絵を添える絵手紙が流行しました。
絵手紙は、手紙の内容に関する絵や季節の絵を描きますが、俳画は少し異なります。
絵手紙よりも描く内容を選び抜き、心の中に迫った絵が俳画です。

今回は、とくに人生経験豊富なシニアにおすすめしたい俳画の魅力とポイント、表現方法までを徹底解説します。

俳画とは

俳画とは、俳句に添える絵です。
俳句は、五七五の17文字の中で心を表現します。
俳画は、17文字に込めた思いを表現した絵です。
絵手紙や水彩画と違う点は、思いのすべてを絵に詰め込まないことです。
俳句と同じように選び抜いた要素を描きます。

俳画は、松尾芭蕉や小林一茶も描いています。
小林一茶の俳画は、とても少ない線で描かれている作品が多いのですが、どれも味があり俳画から俳句の世界観を感じることができます。
俳画は室町時代から描かれ江戸時代になると俳句とともに盛り上がったといわれている日本の伝統的な芸術です。

俳画の5つのポイント

俳画には俳画の魅力を引き出すための5つのポイントがあります。
ここからは、俳画を始める前に知っておきたい5つのポイントをお話しします。

<品位>

俳画は俳句と同じように品位がポイントです。
品位とは「品があること」であり、具体的に見せることは難しいでしょう。
ただ、誰にでもできる「品位を出す方法」があります。それは丁寧に描くことです。
筆や絵の具を乱暴に使って描かれた絵には品がありません。
たとえデッサン力がない絵でも丁寧に描かれた絵からは品を感じます。
つまり、品位とは俳画に取り組む姿勢です。

<シンプル>

俳画はシンプルに描くことがポイントです。
17文字という短い詩に思いを込めても、俳画ですべてを語ってしまったら本末転倒です。
俳画は、俳句の世界観を感じさせて「俳句ではどのようによんでいるのだろう」と興味を惹くようなシンプルさが必要です。

俳画は水彩画のように細かな部分まで描きこむことはしません。
モチーフの特徴を抑えて限られた筆数で描き、色数も必要最低限にすることがコツです。

<大胆さ>

シンプルに描くことは、大胆に描くことでもあります。
シンプルかつ細やかな筆になってしまうとシンプルというよりも弱弱しく物足りない絵になってしまいます。

大胆に描くコツは、基本的な道具の使い方と描き方を身につけておくことです。
俳画は、水彩絵の具や顔彩(日本画で使う絵の具)を使って描きます。
水墨画のように基本的な表現方法を学ぶことで自信をもって大胆な筆はこびができるようになります。

<余白も絵>

「ルビンのつぼ」という絵を知っていますか?
デンマークの心理学者ルビンが描いた黒と白の2色で描かれた絵です。
黒に注目してみれば向かい合った顔に見えるし、白に注目してみれば盃のようなつぼが見えます。
つまり、黒も白も背景ではありません。

俳画は「ルビンのつぼ」のように絵(図)と背景(地)とを分けるのではなく、余白も絵として考えることがポイントです。
俳画はハガキや短冊、大きくても色紙くらいの大きさの紙に描きます。
その中に俳句と俳画と落款の3つの要素を入れます。
余白は白になりますが、白を背景と感じさせず空気感のある構成を考えることがポイントです。

<バランス>

余白に空気感を出すためのポイントがバランスです。
俳画は、俳句と俳画と落款の3つで構成されることが多いのですが、実は余白も要素のひとつと考えることがバランスよく配置するコツです。

例えば、桜が舞い散るさみしさを俳句によみ、桜が舞い散っている様子を俳画にしたならば、余白の白は桜が舞い散っている空間になります。
桜が舞い散っている空間のど真ん中に落款をボンと押してしまったら、桜が舞い散る流れが落款で遮られてしまいます。

俳句と俳画と余白と落款が、ひとつだけで完結することなく、お互いが構成する要素のひとつとして必要不可欠な存在にすることがよいバランスにするポイントです。

俳画の表現方法

俳画は、墨絵で使う附立筆(つけたでふで)という筆を使います。
小学校のときにお習字で使った筆に似ていますが、よりかたさとコシがある筆です。

附立筆の使い方には、基本的な表現方法があります。
代表的な技法は、濃淡やかすれ、にじみや重色(重ね塗り)、ひっかけ(一度に複数の色を塗る)があり、それらを学ぶことが俳画を楽しむ近道です。

ただ、俳画は水彩画や油絵とは大きく異なる点があります。
それは「絵だけで勝負しなくてもいい」ということです。
俳画は、俳句と絵が協力してひとつの作品になります。
描き手の長い人生の中から生み出された言葉や心が俳画の魅力を支えられることが、他の画法にはない俳画独自の表現方法です。

おわりに

シニアから絵をゼロから始めることもできます。
絵を始めることに年齢制限はありません。
しかし「周囲とのスキルの差が気になる」「多くの道具は揃えられない」という場合は、俳画がおすすめです。
俳画は、絵の経験だけでなく、言葉の表現力がポイントです。
さらに基本的な道具を揃えて、使い方をマスターすればいつでもどこでも描ける画法です。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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