手ごろな価格の液晶タブレットや板タブレットが増えたことで、アナログからデジタルに切り替える人が増えています。中でも特に人気を集めているのが「iPad」です。学校教育での導入も進み、小中学生からすでにiPadに慣れ親しんでいる人も少なくありません。
iPadは性能が非常に高く、プロでなくても直感的に操作できるため、デジタルイラストをスムーズに描けます。しかし、使いやすさだけに頼って独学で始めるよりも、「誰かに教わる」という選択肢を強くおすすめします。今回は、iPadでイラストを描くときに「習う」ことで得られるメリットを、具体例を交えながらご紹介します。
目次
実力やニーズに適したアプリやアクセサリを教えてくれるから
デジタルイラストを始める際には、まず必要な道具をそろえるところからスタートします。しかし、選択肢が多すぎて初心者にはどれが自分に合っているのか判断が難しいものです。
たとえば、iPadで使えるアプリだけでも、有名な「Procreate」「Clip Studio Paint」など、無料・有料を含めて多数の選択肢があります。さらに有料アプリの中には、買い切り型と月額制のものがあり、長期的に見ると費用面で大きな違いが出ることも。
また、iPad用のペンには「Apple Pencil」がありますが、これも数万円する高価なアイテムです。一方で、サードパーティー製の互換ペンも多く存在しますが、書き心地や性能には差があるため、初心者が自力で選ぶのは難しいでしょう。
さらに、ペン先の摩耗対策として専用のフィルムや替え芯が必要になることもあります。こうした情報を知らないままだと、無駄な出費が増えたり、不便さを感じたりする原因になります。
プロや講師に習えば、自分の実力や目的に合ったアプリやアクセサリを的確にアドバイスしてもらえるため、効率的にスタートを切ることができます。
ショートカットを使って効率よく描けるようになるから
iPadでイラストを描く際には、便利なショートカット機能を活用することで、制作スピードを大幅に向上させることができます。たとえば、「二本指でタップすると取り消し」「三本指でスワイプしてやり直し」などの基本操作だけでも、作業の効率は格段に良くなります。
しかし、独学ではこうした機能に気づかないまま非効率なやり方を続けてしまうことがよくあります。一度慣れてしまった自己流の方法を後から矯正するのは非常に難しいものです。
たとえば、初心者がよく陥るのが、毎回メニュー画面を開いて消しゴムやペンを切り替えるといった作業です。これをショートカットで簡略化できると知るだけで、数分から数十分の作業時間を節約できます。
習うことで最初から正しい操作方法を身につけられるため、「急がば回れ」で効率的に成長することができます。
通学せずにオンラインでも学びやすいから
iPadでイラストを描く人は、デジタルに慣れている傾向があります。
先生と対面で習わなくても、Zoomなどのオンラインで習うことに抵抗がないのではないでしょうか。
どうしても「教室に通学する」となると、時間的なハードルや距離のハードルが問題になります。
実状は、習いたいけれど習えないという人も多いのかもしれません。
しかし、通学せずにオンラインで習うことができれば、多くのハードルを越えることができるでしょう。
「習う」ことに抵抗を感じている理由が「通学」ならば、オンラインを選ぶことができます。
完成した作品を発展させることができるから
完成した作品を「描くだけで満足してしまう」のは独学のデメリットの一つです。しかし、先生に習うと、描いたイラストをどのように発展させられるかを教わることができます。
たとえば、描いた作品をSNSで公開してファンを増やす方法や、製本して読み物にする方法、同人誌制作に発展させる方法、さらにイラストを商品化して販売する方法まで、プロ目線のアドバイスが得られることがあります。
また、先生は多くの生徒の作品を見ているため、客観的な視点で「あなたの作風は〇〇に向いている」と具体的なアドバイスをくれることも。独学では気づけなかった自分の強みや可能性を発見できるきっかけになります。
新たな人間関係が生まれて、一緒にグループ展を出したり、ビジネスが始まったりする可能性もあるのではないでしょうか。
独学でイラストを描いていても、他の人から作品を評価してもらえる機会がなく、自分の作品の立ち位置がわからない人がたくさんいます。
かといって、むやみやたらに作品を公開したり、安売りしたりしてしまうこともよくありません。
「習う」ということは、スキルを教えてもらうだけでなく、その世界のことを教えてもらい、世界の中に導いてもらうことでもあるのです。
おわりに
独学でiPadを使ってイラストを描こうとすると、書籍や動画をみながら学ぶことになります。
しかし書籍は、細かい説明が多く、読んでいるうちに面倒に感じます。
動画は、指導が一方通行になり、不明点が出てくるとその場で終わってしまうことも多いです。
iPadで絵を描く人の中には、iPadが使いこなせずにあきらめてしまう人もたくさんいます。
描きたいアイデアがあるにもかかわらず、思うように表現できない状況はとてもつらいものです。
先生に習うことは「続けるポイント」でもあります。
iPadは描く手段です。
先生は、あなたとiPadをつなぐことができます。
頭の中にあるアイデアをiPadと先生の指導によって表現してみてはいかがでしょうか。
文筆:式部順子(しきべ じゅんこ) 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業 サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。 在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。