先行き不透明な時代を生き抜くために必要な力がクリエイティブ力です。
クリエイティブ力は、これからの時代を生きる子どもに必要な力と思われがちですが、実はすでに社会に出ている大人にも必要な力であり、大人になってからでも高めることができる力です。
今回は、美術やアートとは関係のない業界にいる大人にも役立つクリエイティブ力の必要性と今すぐできる高める方法をお話しします。
目次
クリエイティブ力とは
クリエイティブ力とは創造力です。
ゼロから一を生み出す力です。
「上司の指示に忠実に従う人」や「指示通りに動ける人」は、人間以外のもので代用できる時代です。
今は「自分で考えて行動できる人」「新しいことを考え出せる人」でなければ生き残ることは難しいでしょう。
そのときに必要になる力がクリエイティブ力です。
学校教育では、すでに「答えのない課題」を積極的に取り入れてクリエイティブ力をつける教育が始まっています。
起業家や経営責任者の中にはアートに興味がある人やコレクターがたくさんいます。
経営者ならば、経済学や社会情勢にアンテナを張っていた方がいい気がしますが、有名で有力なトップほどアートに興味をもっている気がします。
理由は、アートにアンテナを張ることで自分のクリエイティブ力を高めることができるからではないでしょうか。
起業家や経営責任者は、すでに敷かれているレールの上を走っているだけでは競合他社に負けてしまいます。
未開拓の土地に新しいレールを敷かなければならないでしょう。
未開拓の土地をみつける力、そして適したレールを敷く力の源がクリエイティブ力です。
大人にも子どもにもクリエイティブ力が必要な理由
クリエイティブ力は、大人にも子どもにも必要な力です。
ここからは、クリエイティブ力が必要な理由をより具体的にお話しします。
<深く考えることができるようになるから>
ゼロからなにかを生み出すときには、さまざまな視点から深く考える必要があります。
例えば起業家が新しい事業を始めるときには、競合他社や市場、店舗の立地などさまざまなリスクと可能性を考えなければなりません。
有名な起業家は、アートを共通の話題にして人脈を広げています。
人脈を広げることで自分の視野を広げ、たくさんの視点をもつことができるのです。
共通の話題はアート以外にもたくさんありますが、文化や言葉の壁を越えられる話題は意外と少ないのではないでしょうか。
また、アート作品を理解するためには表面的に鑑賞するのではなく、積極的に理解しようとする能動的な姿勢が必要です。
「1+1=2」という決まった答えを言うのではなく、自分で答えを生み出す力は、クリエイティブ力に直結しています。
物事を表面的にとらえるのではなく、深く考える力は大人にも子どもにも必要な力です。
<変化に順応できるようになるから>
30年前と今とでは社会も地球もガラリと変化しています。
30年前にあった職業が消え、新しい職業が登場しています。
地球規模で考えれば、30年前は想像もしなかった災害や変動が起こっています。
変化が起こったとき、文句を言ったり嘆いていたりしているだけでは前に進むことができません。
大切なことは問題を洗い出し、解決策を考えて打ち勝つ力です。
それがクリエイティブ力です。
いつの時代でも変化はあります。
例えば、子どもがハサミを忘れたとき、クリエイティブ力がなければ「ハサミがない=切れない」になります。
しかし、クリエイティブ力がある子どもならば、ハサミがないなら定規を使って紙を切ろうと考えます。
ゼロからなにかを考える力は、日常の小さな変化にも対応できる生きる力です。
大人のビジネス界でも変化に対応できる力は必要です。
例えば、コロナ禍で売上が落ちた革製品製造業者が、電車のつり革に非接触でつかむための革グッズを開発してヒットさせました。
クリエイティブ力が、時代の変化に対応し順応させたのです。
<部分から全体をくみ取れるようになるから>
クリエイティブ力がある人は、部分から全体をくみ取る力ももっています。
いわゆる大局観といわれる力です。
例えば、将棋はずっと先の手まで予測して自分の次の手を考えます。
予測するときに「きっとこれだ」と一つの視点で考えてしまったら、はずしたときのリスクはとても大きくなります。
小さな事実とリスクの中からポイントを押さえて抜き出し、分析して判断する力が大局観です。
「1+1=2」と決まった答えを出すだけでは生き残ることが難しい時代に、部分から全体をくみ取り、その時に応じた答えを出せる力は年齢に関係なく必要な力です。
今すぐできる「クリエイティブ力を高める方法」
先日、テレビ番組で起業家でありアートコレクターでもある前澤友作氏がオークションでアート作品を落札するシーンをみました。
現代アートは、ゴッホやモネのように知名度がある作家ではなく、これから芽が出る可能性がある作家の作品も多く登場します。前澤氏は「これが欲しい」という作品に独自の視点(大局観)で入札する作品に目星をつけていました。
オークションで入札することも大局観やクリエイティブ力を高める方法のひとつだと考えます。
オークションは、入札してくるライバルや芽が出なかったときのリスクなどを考えつつ、独自の視点で結論を出すからです。
ただ、現代アートのオークションに参加するにはたくさんのお金が必要です。
今すぐできる方法は、自分で絵を描かいたり、作品を作ったりすることです。
制作活動に正解はなく、答えはすべて自分の中にあります。
そして、絵は年齢や収入に関係なく、誰もができることです。
白い紙の上にゼロから何かを生み出すことで少しずつクリエイティブ力が育つでしょう。
おわりに
勉強はできるのに図工の時間やディスカッションになると手が止まる子どもがいます。
「1+1=2」の思考に慣れてしまうと、即座に答えが出ずプロセスが必要な課題に対処できなくなってしまうのかもしれません。
絵を描くことは美術やアートのジャンルですが、絵を描く思考のプロセスは、学校で習うロジック(理論)では対応できない部分を高めることに一役かっているのではないでしょうか。
文筆:式部順子(しきべ じゅんこ) 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業 サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。 在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。