絵画教室も美大受験予備校も美術を学ぶ場所です。
絵を学ぶときには、どちらを選べばいいのか迷うかもしれません。
今回は、目的に合った場所で絵を習うために知っておきたい絵画教室と美大受験予備校の違いをお話しします。
目次
最終目標が違う
美大受験予備校の最終目標は美大合格です。
そのため、中高生や浪人生が多く在籍しています。
中学生は高校卒業まで通学し、美大に合格したら卒業します。
浪人する場合は、昼間部クラスに移り次回の合格を目指します。
一方の絵画教室の最終目標は絵を楽しむことです。
年齢に関係なく、絵を楽しめるようになりたいと思った人が随時入学します。
絵を楽しむためには、絵の楽しさを知る必要があります。
美大受験予備校は、試験日をゴールとしているため、ある程度のスピード感と計画に基づいて指導されますが、絵画教室は個人のペースで目標達成を目指します。
ハイスピードで指導をすれば、絵の楽しさよりもクラスのスピードについていくことがプレッシャーに感じるかもしれません。
最終目標の違いによってカリキュラムも指導のスピードも変わります。
指導内容が違う
美大受験予備校は、美大受験のための指導が行われています。
例えば、デッサンならば過去に出題されたモチーフ、デザイン画ならば「受験受け」がいい配色を学びます。
例えば、美大受験の実技試験で蛍光色を使う人はあまりいません。
使うとすれば、かなり高度なセンスが求められます。
美大受験予備校の最終目的は美大合格です。
指導は「リスクが高い蛍光色よりも明度が高い色に変更した方がいい」となる可能性が高いでしょう。
一方の絵画教室では「いい絵」にするための指導がされます。
「いい絵」とは、受験を突破する絵ではなく、描いた人の内面を表現しているオンリーワンの絵です。
そのためには蛍光色を使ってもかまいません。
美大受験予備校は、受験というタイムリミットまでに効率的に合格テクニックを指導しますが、絵画教室は時間をかけて絵の楽しさに自ら気づける指導をします。
レッスン料金が違う
美大受験予備校と絵画教室のレッスン料金は違います。
美大受験予備校は、予備校と同じ料金システムです。
つまり年間授業料と講習会費で構成されています。
年間授業料の相場は、現役生が通う夜間クラスは約50万円、浪人生が通う昼間クラスは約70万円です。
夜間クラスは週3日3時間ずつ程度、昼間クラスは平日毎日9時から17時までのクラスが多いです。
講習会は現役生も浪人生も合同になり9時から17時まで、春夏冬それぞれ約1か月の講習で、講習会ごとに15万円程度かかります。
年間授業料と3回の講習会を合わせれば年間100万円ちかくかかるかもしれません。
美大受験予備校は数が少ないため、交通費も必要です。
絵画教室は、ほとんどが月謝制です。
月1~2万円が多く週1回から2回のクラスが一般的です。1回のクラスは1時間半から2時間程度です。
絵画教室は、規模によって料金に幅があります。
一般家庭の一室を教室としている絵画教室もあれば、美大受験予備校のように充実した設備がある絵画教室もあります。
絵画教室を選ぶときには、月謝の金額だけでなく、設備などの環境と照らし合わせて考えることが大切です。
また、月謝が相場よりもかなり安い場合は、材料費や展示会費用が別途かかることもあります。
生徒の年齢層が違う
美大受験予備校は、中学生クラスと高校生クラスト浪人生クラスで構成されていることが多いため、13歳から20歳前後の比較的若い人たちが多く集まります。
美大受験予備校の中には小学生クラスやシニアクラスを設けているところもありますが、美大受験生とかち合わない土日にコースが設定されている傾向があります。
社会人の中には、美大受験生と同じ指導を希望し、あえて現役高校生と同じ夜間クラスに入る人もいます(予備校によっては美大受験をしなければ入学できないこともあり)。
夜間クラスに入れば同じ指導を受けることはできますが、周囲との年齢層があまりにかけ離れてしまい、居心地悪く感じるかもしれません。
絵画教室は、未就学児からシニアまで幅広い年齢層の生徒が集まります。
年齢別にクラスが分けられていることが多いです。
未就学児やシニアは、教室周辺の人たちが集まりやすく、友達の輪を広げることもできます。
おわりに
美大受験予備校は、専攻する科によってクラスが分かれているため、クラスの雰囲気が合わなくても気軽にクラスを変わることができません。
絵画教室は、同じ内容のクラスがいくつか設定されているため、臨機応変にクラスや曜日を変えることができます。
美大受験予備校は、美大合格レベルのテクニックを習得することはできますが、指導には厳しさがあります。
絵画教室は、絵の楽しさを学ぶことはできますが、目指す目標は自分で設定する必要があります。
両方のメリットとデメリットを知り、より自分の目指す絵が習える場所を探してみてはいかがでしょうか。
文筆:式部順子(しきべ じゅんこ) 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業 サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。 在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。