教育現場注目の「STEAM教育」とは? ARTが追加された理由と親ができること

親世代が子どもだった時代は「英語ができれば食べていかれる」「パソコンができれば就職に困らない」と言われていました。

しかし現在は「英語はできて当たり前」「パソコンができないと何もできない」という時代です。
時代にともなって教育も変わっています。

今回は新しい時代を生き抜くための教育「STEAM教育」と新たに追加されたARTの意義についてわかりやすくお話しします。

STEAM教育とは

STEAM教育とは、SCIENCE(科学)の「S」とTECHNOLOGY(技術)の「T」とENGINEERING(工学・ものづくり)の「E」とART(アート)の「A」とMATHEMATICS(数学)の「M」を意味しています。

科学技術に優れた人材を生むために生まれた教育です。
日本でも学校でプログラミング教育が導入され、STEAM教育が始まっています。

以前はARTを含まずSTEM教育といわれていました。
いわゆる理系の教育がメインで「プログラミングや新しい科学テクノロジーの教育こそ大切だ」という教育でした。

STEM教育のおかげで、高いプログラミング能力をもった人材が多く輩出され、科学技術分野は大きく発展しました。そして、新たな課題を突破するためにARTが追加されSTEAM教育が始まったのです。

ART(アート)が追加された理由

ART(アート)が追加される前のSTEM教育によって、プログラミング能力や科学技術力に優れた人材はたくさん生まれました。

しかし、高い技術力だけでは「言われたものは作れる」ということしかできません。
「何を作りたいのか」「どんなものが魅力的か」を創造する力が足りないのです。

STEM教育にARTが追加された理由は、ずばり「限界を突破し新しい時代を生き抜くため」です。
高い科学技術力があっても「能力の使いみち」が思いつかなければ宝の持ち腐れです。

また、高い科学技術力があっても「私はこれができる」と表現する力がなければ、同じように宝の持ち腐れになります。

ARTが追加されたことによって、STEM教育の限界を突破し、新たな時代を生き抜く教育ができるようになります。

STEAM教育のARTで求められること

STEAM教育のARTは、学校の美術の授業で習うこととはちょっと違います。
美術の歴史や画材の使い方ではなく「芸術の根本的なこと」が求められているのです。

ここからは、STEAM教育のARTで求められることを具体的にわかりやすく解説します。

<考える力>

考える力とは「創造する力」です。数学や科学が得意な人は「もっと速くゴミを処理できる機械が欲しい」という問題は簡単に解決できるかもしれません。
しかし「ゴミ問題の解決策を考えてほしい」という問題はまったく別の力が必要です。ゼロから考える力が求められます。

ARTの考える力は、芸術の根本である「オリジナルな発想」「今までにないアイデア」を創造する力です。
「これからの時代はなにがあればいいのか」「今あるモノがどう進化するといいのか」を考えることができれば、そのあとは高い科学技術力によって実現することができます。

<表現する力>

現代は、自分の考えを表現する力が劣っているように感じます。
自由研究の発表をするときに研究のきっかけを聞かれ「お母さんが言ったから」と答える子がいます。
先生が「お母さんがなんて言ったの? 」と聞くと「これがいいって」と答えます。

先生が「なぜお母さんはこれがいいって言ったの? 」と聞くと、やっと「私はカブトムシが好きだから」と答えを言うのです。
どんなに素晴らしい自由研究であっても、このような発表では素晴らしさが半減してしまいます。

高い能力をいかすためには自己満足で終わらないための表現する力が不可欠です。

<伝える力>

伝える力はコミュニケーション能力です。
ARTは、自分を表現することでありコミュニケーション能力は関係ないと思われているかもしれません。
しかし、ARTはコミュニケーションです。みる人に何かを感じさせることで作品はART作品になります。

ARTは、数学や科学のように正解がありません。
「答えは3」と言えばすべての人に伝わるということはなく、自分の表現を言葉や文化を超えて、相手にわかるように伝える力が必要です。

ART(アート)感覚を身につけるために親ができること

STEAM教育のARTは、学校教育を受ける前から始めることができます。
STEAM教育のARTは「考える・表現する・伝える」がポイントです。
この3つの経験が積める場所と機会を与えることが、ART感覚を子どもに身につけさせるために親ができることです。

「考える・表現する・伝える」は、絵を描くことや作品を作ることに置き換えることができます。
絵を描くとき「何を描こうかな」と考え、好きな画材を選んで表現します。

自分の表現したいことを相手に伝えるためには「どう描けばいいのか」を考えることは立派なコミュニケーション能力の育成になります。

学習塾や英会話教室に通わせることは、学力や知識の向上になります。
しかし、それだけではARTが追加されていません。

正解のない問題に挑戦する体験を積ませることが、ART感覚を身につけるために親ができることです。

おわりに

親世代が子どもだったころは、英語やそろばんのように技術力を高める習い事が人気でした。
しかし今求められている力は、技術力だけでなく、感じる力「感性」と想像する力「想像力」と表現する力「表現力」です。
ゼロから作品を生み出す「絵」でSTEAM教育のARTに求められる3つの力をプラスしてみてはいかがでしょうか。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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