友人やプロのイラストをみて「これは何を使って描いたのだろう」と思ったことはないでしょうか。
イラストは、さまざまな画材で描くことができます。
今回は、イラスト初心者でも使いやすい画材からプロも使っている本格的な画材まで、
それぞれの特徴をくわしく解説します。
目次
イラストやマンガのカラー原稿に「アルコールマーカー」
イラストを描く人ならば一度は手に取ったことがある画材が「アルコールマーカー」です。
アルコールマーカーは、染料がアルコールに溶けているため、乾きが速く塗りムラが少ない特徴があります。
中でも人気のアルコールマーカーが「コピックシリーズ」です。
1987年に株式会社Tooが開発したアルコールペンで、今ではプロアマ問わず人気があります。
コピックシリーズの「コピックスケッチ」は358色があり、コピックエアーブラッシングシステムと合体させることでエアブラシ表現もすることができます。
さらにコピックには色がない「カラーブレンダー」があります。
カラーブレンダーを上手に使いこなすことで、修正したりぼかしたりする高度な表現もすることができます。
慣れてきたら「コピックバリオスインク」という補充用のインクを混色して
オリジナル色のマーカーを作ることもできます。
マーカーという名前でありながらも、絵の具のように繊細に色を使える画材です。
アルコールマーカーは、プロのマンガ家やイラストレーターがカラー原稿を描くためにも使っている画材です。
筆で描くことが苦手だったり、色が濁りがちだったりする人におすすめの画材です。
細かい作品に便利「ドローイングペン(ミリペン)」
ドローイングペンは、マンガやイラストを描くときに使うとても細いペンです。
色数は少なく黒色が定番です。
「黒1色ではイラストは描けない」と思う人がいるかもしれません。
実は黒1色でもさまざまな太さのドローイングペンを駆使することで、立体感のある素晴らしい作品を描くことができます。
ドローイングペンは太いものなら2mm、細いものなら0.03mmまであります。
インクの種類は油性と水性があり、水性は乾くと耐水性になることが多く、絵の具や他の画材と組み合わせて使うこともできます。
ドローイングペンは、ペン先が細いため筆圧をかけるとペン先がつぶれてしまいます。
初心者にはペン先が強いデリータのネオピコライン3やステッドラーのピグメントライナーがおすすめです。
ステッドラーのピグメントライナーは色数も全12色と豊富にあります。
ドローイングペンは、デッサン力があり黒1色で勝負できる人や、いつでもどこでもイラストを描きたい人におすすめです。
安価で手軽「ゲルインクボールペン」
「初めて描いたイラストは筆箱にあったボールペンで描いた」という人も多いのではないでしょうか。
最近は、ゲルインクボールペンと呼ばれる水性インクに増粘剤を混ぜたなめらかな書き味のボールペンが増えています。
学校で使う筆記用具としても主流になっています。
ゲルインクボールペンは、色数も豊富でキャップを開けるだけで誰でも使える手軽さがあります。
昔のボールペンのようにペン先のボールが転がらずにかすれることもなく、ストレスフリーで描き進めることができます。
多摩美術大学卒の磯野キャビア氏は、文具店で売っている一般的なボールペンでイラストを描いている画家です。「作品のすごさは画材ではなく腕」ということを突き付けられる作品ばかりです。
デジタルイラストの必需品「タブレット」
最近は、小学生でもイラストをデジタルで描いています。
デジタルでイラストを描くメリットは多く、デジタルイラストの需要は右肩上がりです。
デジタルイラストにはペンタブレットが必要です。
ペンタブレットには「板型ペンタブレット」と「液晶ペンタブレット」の2種類があります。
板型ペンタブレットは、パソコンの画面をみながら手元の板の上に付属のペンを使って絵を描きます。
手元をみないで絵を描くため、感覚をつかむまでに時間はかかります。
液晶ペンタブレットは、手元をみながら手元の板の上に絵を描きます。
初心者には、感覚で絵が描ける液晶ペンタブレットのほうがおすすめです。
今後、デジタルイラストはますますイラストの主流になるでしょう。
思い切って必要な機材を購入しようと思うときには、イラストに適した機能が備わったソフトを選ぶようにしましょう。
ソフトやタブレットによっては手持ちのパソコンと対応していないこともあります。
デジタルイラストに挑戦するときには、機材の準備段階から先生や経験者に相談してみるといいのではないでしょうか。
おわりに
素晴らしいイラストは、使っている画材の気配を感じさせません。
黒1色のドローイングペンで描かれた作品でも、線の気配が消えて無数の重なった線が立体的な物や空間を浮かび上がらせています。
素晴らしいイラストを描く人は、画材の特徴を知りつくし、気配を感じさせることなく作品にまとめることができるのです。
どんな画材を選んだとしても、使いこなせるようになるまでには相当の経験が必要です。
イラストが上手くなるコツは、イラストを描くことを楽しみ、長く描き続けることで画材を極めることなのかもしれません。
文筆:式部順子(しきべ じゅんこ) 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業 サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。 在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。