よくある質問「未就学児に絵画教室は早すぎますか」に答えます! 未就学児に適した絵画教室とは

小学校に入学する前の子どもたち「未就学児」の習い事が増えています。
しかし未就学児は集団行動に慣れていません。
とくに絵画教室のように長時間イスに座って集中することは苦手かもしれません。
親は「未就学児に絵画教室は早すぎるのでは」と心配になるでしょう。

今回は、よくある質問「未就学児に絵画教室は早すぎますか」にスッキリと答え、未就学児に適した絵画教室の選び方をお話しします。

3歳から「絵」は描ける! 4歳になったら習うこともできる

未就学児の発達には個人差がありますが、おおよその年齢ごとに絵の表現に特徴があります。

クレヨンが持てるようになる1歳から2歳ごろは「なぐり描き期」です。
点や丸のような形を描きますが、絵を描くというよりも腕を動かす運動と心を解き放つ感覚を味わっているような絵を描きます。
このころは「絵を習う」というよりも、自由に描くことで線をコントロールする力を養うときでしょう。

2歳から3歳になると、イメージして描くことは難しくても、描いたものをみて具体的なものをイメージできるようになります。
例えば、なにげなく丸と線を描いた後に「これはボールとバット」と後付けで絵の意味を考えます。

3歳を過ぎたころから「前図式」と呼ばれる段階に入ります。
丸で頭と顔を描き、放射状に線を描くことで手と足を表現する「頭足人」とよばれる絵を描くようになります。
しばしば「うちの子、頭から手や足が生えている人間を描くのですが大丈夫でしょうか」と質問されますが、発達の段階で多くの子どもが描く典型的な絵です。

頭足人が描けるようになると星やハートなどお気に入りの形を黙々と並べて描く「カタログ表現」をするようになります。
好きなものを好きなだけ描くことで「絵を描く楽しさ」を知ります。
絵の目的である「表現する楽しさ」を知る第一歩です。

4歳以降は、描きたいものを「そのものらしく描こう」とするようになります。
例えば、家族の絵を描くときには、自分の中で存在感が大きい人を大きく描いたり(誇張表現)、ものの特徴をわかりやすくするために、いろいろな視点からみた絵を1枚の紙に描いたり(多視点図)、地面の線を描くことで天と地を描き分けたり(基底線)することができます。

3歳ごろからは、本人以外がみても「絵だ」と認識できる表現をします。
4歳を過ぎると、「こう描きたい」という絵をイメージできるため、絵の表現の種類が急激に増えます。
4歳になると語彙力も高まるため、絵を描くだけでなく、習うこともできるようになるでしょう。

未就学児が絵画教室に通うメリット

未就学児が自宅で好きなように絵を描くだけでなく、絵画教室で先生の指導の下で絵を描くことにはメリットがあります。

ここからは、未就学児が絵画教室に通うメリットを2つお話しします。

<絵の基本的な描き方がわかる>

未就学児でも4歳ごろになると器用に画材を使えるようになります。
また、描きたいものを具体的にイメージすることができるようになり、頭の中のイメージを紙の上に描こうとします。

しかし「イメージ通りの絵を紙の上に描く」ためには指導が必要です。
例えば、4歳ごろに多い表現に「レントゲン画」というものがあります。
車に人が乗っている様子を描くとき、車の輪郭だけを線で描き、車の中の様子をまるでレントゲンで写したかのように描いてしまう表現です。

まだ「見えない部分は描かない」ということができません。
また、絵の描き方がパターン化してしまう子も増えます。

例えば「チューリップは上をギザギザ線で描く」「ぶどうは上が3粒で次が2粒、最後は1粒という順番で描く」というように型にはまった描き方をします。

レントゲン画を描く子は「描きたいけれど描けない」状況です。
パターン化している子は「新しい表現が生み出せない」状況です。
絵画教室に通い先生の指導や自分以外の子の作品を見ることで、一歩前に進むことができるのです。

<集団でのマナーを一足先に学べる>

未就学児は小学校に入学する前の子どもたちです。
集団生活に慣れていない子もたくさんいます。
絵画教室は、年代別にクラスが分かれているため、同年代の子どもたちと切磋琢磨しながら成長することができます。

例えば、絵画教室は教室の入退室時にあいさつをすることがマナーです。
「こんにちは」「ありがとうございました」という自宅ではあまり使わない言葉も自然と出るようになるでしょう。
また、準備と後片付けもします。

自分や友達の言動が周囲に影響を与えることも体で感じるでしょう。
絵画教室に未就学児から入学することで、小学校に入学する前に社会性やマナーを無理なく学ぶことができます。

未就学児に適した絵画教室とは

未就学児向けの絵画教室を選ぶ際には、「かわいい」「やさしい」雰囲気だけでなく、安全面への配慮が重要です。
子どもが安心して創作活動に集中できる環境が整っているかを、次の5つのポイントで見極めましょう。


① サポート職員の有無

未就学児は予測不能な行動をすることがよくあります。
教室の外へ飛び出してしまう、急に飽きて床に転がる、絵の具を誤って口に入れるなど、トラブルは付きものです。
そのため、講師以外に補助的なサポート職員がいるかどうかを確認しましょう。

✔ チェックポイント
✅ 少人数クラスの場合、講師1人で全員の安全を管理できるか
✅ 大人数クラスの場合、補助スタッフが配置されているか
✅ 怪我や体調不良時に迅速に対応できる体制が整っているか


② 災害時の対応

近年、大きな地震や台風などの自然災害が頻発しています。
特に、未就学児は自力で避難するのが難しいため、教室側の対応が重要になります。

✔ チェックポイント
✅ 防火防災対策、避難場所や避難経路が事前に公開されているか
✅ 保護者が不在時の対応(引き渡しルール)が明確に決まっているか
✅ 防災グッズ(ヘルメット・非常食など)が常備されているか


③ 教室の環境・設備

未就学児が使う教室は、安全かつ衛生的な環境であることが大前提です。
また、子どもが創作活動を伸び伸びと楽しめるように、スペースの広さや設備にも注目しましょう。

✔ チェックポイント
✅ 机や椅子の高さが子どもに合っているか
✅ 画材や道具が整理整頓されており、誤飲・誤使用の危険がないか
✅ 床が滑りにくく、転倒のリスクが低いか
✅ 教室内に十分な換気がされているか


④ 画材の安全性

未就学児はまだ手先の器用さが発達途中で、無意識に手や道具を口に入れてしまうことがあります。
そのため、教室で使用する画材が安全基準をクリアしているかを事前に確認しましょう。

✔ チェックポイント
✅ 絵の具やクレヨンが「APマーク」「CEマーク」などの安全基準を満たしているか
✅ 画材に有害な化学物質が含まれていないか(例:ホルムアルデヒド、重金属など)
✅ 手や服についても安全に洗い落とせるものを使用しているか


⑤ 指導方針と子どもへの対応

未就学児にとって、絵画教室は「技術を学ぶ場」というより、創造力や表現力を伸ばす場です。
そのため、講師の指導方針や子どもへの対応が、子どもの発達に合っているかを見極めましょう。

✔ チェックポイント
✅ 「自由に描くこと」を大切にしているか(過度に技術指導を押し付けていないか)
✅ 一人ひとりの個性やペースに寄り添った指導をしているか
✅ 叱るのではなく、ポジティブな声かけを大切にしているか

「未就学児に適した絵画教室」というと「かわいい」「やさしい」ということをポイントにしてしまいがちですが、一番大切なポイントは「安全」です。
さまざまな視点から「安全面への配慮」がされている絵画教室を選ぶことが大切です。

おわりに

未就学児が絵画教室に通う目的は「絵の上達」ではなく「表現力と感性と創造力」を育てることです。
これらの力は、ひとつのスキルを学べばいいのではなく、教室で出会う先生や友達、作品など絵画教室での出会いすべてによって養われます。
未就学児は、スポンジのようになんでも吸収する時期です。
未就学児に絵画教室は早すぎません。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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