長時間、集中力を保ちながら絵を描き続けることは大人でも大変なことです。
活発な子どもならば、さらに大変です。
また、毎週同じ時間に同じ場所で絵を描くことに飽きてしまう子どももいます。
今回は、飽きっぽい子どもや集中力が続かない子どもでも長く続けられる絵画教室の特徴をお話しします。
目次
絵や工作などさまざまなジャンルの造形をしている
「絵画教室」という名前がついていると、絵の具を使った「絵」だけを教える教室と感じる人も多いのではないでしょうか。
絵の具や色鉛筆だけを使った「絵」だけでは、ほとんどの子どもは飽きてしまうでしょう。
そのため、子どもを対象にした教室では粘土や紙を使った工作やイベントを取り入れて、子どもが飽きない工夫をしています。
工作は、子どもの年齢に応じた課題が必要です。
はさみを持たせることが危険な年齢ならば、手で紙をちぎったり折ったりして作品を作ります。
しばしば、絵画教室のホームページで大人顔負けの作品が掲載されていることがありますが、あまりにも上手な作品が多いときには先生の手が入りすぎている可能性があります。
作品をみたときに「これはなんだろう」と思うくらい子どもが自由に制作にできる教室ならば、子どもは主体的に取り組み、飽きずに通い続けることができるのではないでしょうか。
やる気がでないときに無理をさせない
大人でもやる気がでないときがあります。
大人ならば適当に周囲に合わせつつ上手に気分転換することができますが、子どもはそうはいきません。
やる気が出ないときには手を動かさず、ボーッとしている時間が長くなってしまいます。
そんなとき、先生が「ちゃんとやりなさい」「これではうまくならないよ」と間髪入れず責めてしまう教室は子どもにとって負担になるでしょう。
やる気がでないときに描いても満足できる絵は描けません。
そんなときには、ボーッとして周りの作品を見まわしたり、上手に描けている人の描き方を眺めたりしているだけで十分です。
また、小さな子どもは体調が悪くても症状を上手に伝えることができません。
子どもの様子を観察して「飽きているのか」「具合が悪いのか」「課題に興味をもてないのか」をしっかりと見極めて、いずれにしても無理をさせない教室がおすすめです。
「無理をさせない」ということは、飽きっぽい子どもに限らず、すべての子どもに共通していえる「続けるポイント」です。
制作だけに集中できる雰囲気と環境がある
制作中に片づけや時間を気にしなくてはいけない雰囲気の中では集中して描くことができません。
「集中力がない」「飽きっぽい」と思われている子どもの中には、本当は集中力があるのに集中力が発揮できない環境にいる子どももいます。
例えば、粘土工作をするときに「服を汚してはいけません」「作業は粘土板の上だけです」と言われれば「汚さない」ということに集中してしまい、制作をする雰囲気はありません。
また「レッスンは50分までだから40分になったら片づけてください」と言われれば時間が気になってしまいます。
子どもが飽きたり嫌がったりせず通い続けられる教室は「汚れることを前提」「時間に融通が利く工夫」がされています。
時間に融通を利かせることは教室によっては難しいかもしれません。
しかし片づけが遅くなりがちな子どもでも、いつも自分だけが居残りになっていれば「急がなくてはいけない」と自分から感じ、徐々に行動が早くなります。
子どもに好かれる絵画教室は「子どもが教室にあわせる」のではなく「教室が子どもにあわせる余裕」をもっています。
もしも、マイペースな子どもで「汚れ」や「時間」が集中力を妨げる原因になっているならば、オンラインレッスンを選ぶ方法もあります。
オンラインレッスンならば、自宅でゆっくりと制作することができます。
指導が具体的で着実に技術力をあげる
子どもを対象にした絵画教室だからといって楽しいだけでは飽きてしまいます。
飽きっぽい子どもでも自分の技術力が向上し、前よりも満足できる絵が描ければやる気がでます。
技術力をあげるためには、具体的な指導が必要です。
「もっと奥行きを出して」ではなく「手前をはっきり描いて、奥は輪郭をぼやかしてみると奥行きがでる」という具体的な指導をすると子どもは「やってみよう」と思います。
実際に指導通りに手を動かし、効果が目に見えると一気にやる気が出るものです。
飽きっぽい子どもでも続けられる絵画教室は、子どものやる気を引き出すコツを知っています。
大人や先生の作品をみる機会がある
筆者の子どもも美大受験予備校の小学生クラスで絵を習っていました。
たくさんの子どもたちの中で楽しく遊びながら描いていましたが「楽しいだけの雰囲気」に慣れ始めている様子でした。
そんなある日、画材を片づけるために、芸大の日本画科を受験する人たちが集まっている教室に入る機会がありました。
芸大受験を控え教室の雰囲気は張りつめていました。
子どもたちは「静かに教室に入るように」と指示され緊張した面持ちで入室し、速やかに片づけて教室を出てきました。
教室に入る前と出てきたときでは、子どもたちの表情が全く違うのです。
筆者の子どもは「ひとつもミスがない絵を描いていた」とボソッとつぶやき「あんな絵が描けたらいいな」と言ったのです。
「百聞は一見に如かず」です。
親や先生がたくさんの言葉でやる気を出させようとしても、ちらっとみた「全力の絵」「プロの絵」が与える衝撃のほうが大きいようです。
おわりに
子どもを飽きさせずに惹きつける絵画教室には、子どもに集中力ややる気を求めるだけではなく、飽きさせない工夫や努力があります。
「絵は頑張るもの」ではなく「絵は楽しむもの」であることを自然と感じられる教室を探してみてはいかがでしょうか。
文筆:式部順子(しきべ じゅんこ) 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業 サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。 在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。