子どもに絵を習わせる前に知っておきたい4つのこと

子どもに絵を習わせることを考えたとき、多くの親が「上手になってほしい」「才能を伸ばしたい」と思うでしょう。しかし、絵は単なる技術だけでなく、表現力や創造力を育む大切な手段です。そのためには、親としての関わり方が重要になります。今回は、子どもがのびのびと絵を楽しめるようにするために知っておきたい4つのポイントをお伝えします。

子どもの作品に優劣をつけない

子どもが描いた絵を見ると、大人の目線では「上手」「下手」と評価してしまいがちです。しかし、絵の目的は「表現すること」にあります。花を描くのが得意な子もいれば、空想の世界を自由に描くのが得意な子もいるでしょう。どの作品もその子にとっての大切な表現であり、比べるものではありません。

絵を習い始めると、定期的に作品を描きます。花を描くこともあれば、空想の世界を描くこともあるでしょう。
どんな人にも得意なジャンルとそうでないジャンルがあります。
デッサンの中でも花は難易度が高いと言われています。

規則的なようで不規則に並ぶ花びらを丁寧に描くことは相当のスキルが必要です。
根気が続かない子どもにはつらいテーマかもしれません。

しかし、根気が続かない子どもでも空想の世界の絵になればのびのびと描くことができるでしょう。
そのような子どもが花を描いたとき「もっと丁寧に描かなきゃ」「こっちの絵みたいに描けばいいじゃない」と作品ごとに優劣をつけられたらどう感じるでしょうか。

「私は花の絵が下手」「花の絵は嫌い」と思ってしまうのではないでしょうか。

もし「もっと丁寧に描かなきゃ」と優劣をつけられたら、子どもは「自分の絵はダメなんだ」と感じてしまいます。それよりも、「この色使いが素敵だね」「ここにこんな工夫があるんだね」と、子どもが自分の絵を肯定的に受け止められるような声かけを心がけましょう。そうすることで、子どもは自分の表現に自信を持ち、創造性を伸ばしていくことができ

他の子どもの絵を比べない

絵を習いに行くと、同年代の子どもたちと一緒に絵を描きます。
絵の描き方は、年齢に関係ありません。絵を描きなれている子どもは、スピードも速く道具もきれいに使いこなします。

一方、頭の中で素晴らしいイメージがあっても、うまく表現できない子どももいます。
仕上がった作品を並べると、どうしても差が出ることがあります。

その差は、本人が一番痛感しているはずです。
親は、他の子どもの絵を比べて感想を言わないようにしましょう。
ただでさえ痛感している子どもの心にとどめをさすことになってしまいます。

絵の技術は訓練で向上します。しかし、傷ついたプライドや自信を取り戻すことは大変なことです。

また、子ども自身が「○○くんの絵の方が上手だ…」と落ち込むこともあります。そんなときは、「絵にはいろんな描き方があって、それぞれの個性があるんだよ」と伝え、自分の表現に自信を持てるようにしてあげましょう。自分の表現を大切にすることが、創造力の発展につながります

画材や道具は使いやすいものを選ぶ

絵を習うときには、絵具や道具を用意します。画材や道具の値段は幅広く、安いものならば100円ショップでそろえることもできるでしょう。

とくに絵を初めて習う人は「いつまで続くかわからないから安いものでいい」と思うかもしれません。
しかし、画材や道具に関しては、値段よりも使いやすさで選んだ方がいいでしょう。

なぜならば、使いにくい道具や描きにくい画材はやる気をなくしてしまうからです。
例えば、絵を描く鉛筆があります。
美大受験生の多くが使用する鉛筆はドイツ製ブランドで1本180円程度です。
最安値の店ではデッサン用鉛筆が6本セット100円で売っていました。
安い方で十分と思うかもしれませんが、実際に使ってみると描き心地や発色が違います。
描きやすく発色がいい鉛筆は、線を描くだけで気持ちよく「描きたい」という気持ちが芽生えるのです。

とくに色鉛筆は発色にこだわって選んだ方がいいでしょう。
芯が固く発色が悪い色鉛筆は、強く描きこむため紙の目がつぶれてしまいます。
紙の目がつぶれてしまうと、表面がツルツルになり、それ以上色がのらなくなるのです。
どんなに高い技術をもっていても、色がのらなければ絵は描けません。

画材の選び方がわからない場合は、講師に相談するようにしましょう。

美大進学や入賞などのゴールを決めない

習い事をはじめるとき「合格」「資格取得」などのゴールを設定することがあります。
英語やスポーツならば、ゴールを設定することでモチベーション高めることができるのかもしれません。

しかし、絵を習うときにはゴールの設定は必要ないのではないでしょうか。
絵を習い始めることに年齢制限がないのと同様に、絵に定年はありません。

しばしば美大進学をゴールに設定したり、コンクール入賞を目標にしたりする人がいますが、それらはゴールではなく通過点です。
絵の目的は表現であり、表現したいことは何歳になっても、いつ何時現れるかわからないのです。
絵を習うことにゴールを設定するとしたら「表現したいものがみつかったときに表現手段を持っていること」かもしれません。

美大受験や入賞をゴールに設定して絵を習い始めると、ゴール達成するための描き方を意識してしまい、のびのびと描けなくなってしまう可能性があります。

子どもに絵を習わせるときには、あえてゴールを決めず「絵の楽しさ」を感じ「続けたい」と思える環境を整えるようにしましょう。

おわりに

子どもに絵を習わせるときに一番大切なことは「子どもが絵を描きやすい環境」を整えることです。
環境とは、道具の準備や時間だけではなく、気持ちや心のゆとりです。
絵を習わせても思うような成果があらわれなければ、親は焦ってしまうかもしれません。
しかし、どっしりと成長を見守ってあげることも環境を整える一環です。
子どもの感性の変化をゆっくりと楽しんでみてはいかがでしょうか。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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