絵が上達したいと思ったとき、独学で取り組むべきか、それとも教室やアトリエに通って学ぶべきか迷う方もいるでしょう。特に大人の場合、「美大を目指しているわけでもないし、そこまでお金をかけるのは…」と考える人も多いかもしれません。
今回は、絵を上達させたい人が独学よりも教室やアトリエで学ぶべき理由を5つに分けてご紹介します。

目次
自分の作品を客観視できる環境が得られる
絵を上達させるポイントは「下手な部分をみつけること」です。
下手な部分は苦手なことであり、改善することで絵は上達します。
独学で絵を学んでいると「なかなかうまく描けた」と思うことが多いようです。
絵を描く頻度が少なかった人は、最後まで絵を描き切ったことで満足してしまい、想像していたよりも上手に描けたような気持になります。
教室やアトリエで絵を学ぶと、自分の作品以外も自然と目に入るようになり、自分の作品を客観的にみられるようになります。
筆者が美大受験を志し、美大受験の夏期講習に初めて参加したとき、地方から美大を目指して講習を受けに来た人がいました。
彼女は、独学で絵を描き続け「自分はうまい」と思っていたのです。
ところが、講習初日にみんなと一緒に絵を描き始めたとたんに自分の現実に気がついたのです。
周囲の作品と比べることで「うまい」と思っていた自分の絵は、最下位にちかいレベルであると気がついたのです。
彼女は、絵は趣味にとどめることにしました。
絵の上達は、美大受験とは違い時間に制限がありません。
少しずつ自分の絵の下手な部分をみつけて改善していけばいいのです。
そのためには客観的な目が必要であり、教室やアトリエが役立つのです。
講師からの講評で具体的なアドバイスがもらえる
客観的な目で自分の作品を見ても、素人の目だけでは限界があります。
教室やアトリエに通うメリットは、講師や先生からの指導を受けられることです。
教室やアトリエでは、ひとつの作品の制作が終わったら講評を行います。
講評は、多くの作品を横一列に並べてひとつひとつの作品に対して講師がコメントを伝えます。
独学でも、プロからのコメントや指導を受ける手段はあります。
通信教育では、作品にトレーシングペーパーをかけて赤ペンで指導を描きこんでくれるところもあります。
しかし、教室やアトリエの講評は自分以外の作品の講評も見聞きすることができます。
他の作品の講評を繰り返し聞いていくうちに「この絵は、きっと色が薄いから弱く見えるといわれるだろう」と指導コメントを予測できるようになるのです。
そこまでくれば、講評前に自分の作品の下手な部分をみつけ改善しながら手を加えられるようになります。

継続できる環境が整う
教室やアトリエに通うと講師や生徒同士の人間関係が生まれます。
一方の独学は自分との戦いのみです。
講師や他の生徒との交流があると、「今日は休みたいな」と思ったときでも「みんなが待っている」と考えて教室に足を運ぶきっかけになります。
また、ライバルがいれば「今日休んだら遅れてしまう」と負けん気をおこして頑張れるかもしれません。
独学は、よく言えばマイペースで学ぶことができますが、悪く言えば進歩が遅くなります。
もっと悪く言えば簡単にやめることができてしまうのです。
絵の上達は、練習の積み重ねです。デッサンを上手に描いている人は、何百枚ものデッサンを描いています。
何百枚ものデッサンを描き続けるためには、自分だけの忍耐や根性だけでは物足りないのかもしれません。
絵画やイラストのコンクールや展覧会に挑戦する機会が増える
絵を描くモチベーションを上げる方法の一つに、作品をコンクールや展覧会に出品することがあります。独学でも公募展に応募できますが、教室に通うことで得られる情報量やアドバイスは圧倒的に多いです。
ただ、美術は単に「絵」といっても種類がたくさんあります。
イラストも風景画も抽象画も「絵」です。
公募展やコンクールには審査員がいます。
自分の作品の良さを理解してくれる審査員がいるコンクールや公募展の方が認められる可能性は高くなるでしょう。
自分だけでは、どの審査員がどのような絵の専門家なのかわかりません。
教室やアトリエに通うことで「あなたの作品は、このコンクールにいいかもしれない」というアドバイスをもらうことができます。
絵のコンクールや公募展は小さなものも含めると意外とたくさんあります。
みんなが知っているようなコンクールは応募数が多く競争率が高い傾向があります。
教室やアトリエに通えば、知名度が低い公募展の情報も多く知ることができ、作品を出す機会も増えます。
プロと接することで将来のビジョンがみえるから
絵の世界でプロと接する機会は、独学ではほとんどありません。しかし、教室やアトリエには現役で活躍するプロの画家やイラストレーター、絵本作家などが講師として在籍している場合があります。
たとえば、「画家」や「イラストレーター」以外にも、「現代アーティスト」や「絵本作家」、さらに「アートディレクター」など、さまざまなキャリアがあることを知ることで、自分の将来の可能性が広がります。
また、プロの視点からアドバイスを受けることで、ただ「絵を上手に描きたい」という目標から、「この分野で活躍したい」という明確なビジョンを持つことができるようになるのです。
おわりに
教室やアトリエには、人以外にも美術に関するものがたくさんあります。
石膏像やイーゼルそして画材のにおいとクリエイティブな雰囲気です。
教室やアトリエには、自宅では味わえない非日常の空気が流れています。
文筆:式部順子(しきべ じゅんこ) 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業 サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。 在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。