「子どもに絵を上手になってほしい」「表現力を育ててあげたい」――そんなふうに思っているお母さんは多いのではないでしょうか。
でも、「絵画教室に通わせるのはちょっとハードルが高い」「本当に通わせる意味があるのか不安」など、いざ習い事として考えると、心配や迷いも出てきますよね。
実は、子どもの絵を上達させるために必要なことは、教室に通わせることだけではありません。おうちの中でも、日々の関わりの中で“表現力の土台”を育てることができるのです。
今回は、教育と表現の専門家の視点から、「子ども 表現力 育て方」「絵画教室 習い事 不安」「子ども 絵 変」といったキーワードに悩むお母さんたちに向けて、家庭でできる絵のサポート方法をわかりやすくご紹介します。

目次
「描きたいときに描ける」環境が、子どもの表現力を育てる
子どもの絵を伸ばす第一歩は、「たくさん描くこと」。とてもシンプルなことですが、実はこれが一番大切です。
とはいえ、「ほら、絵を描いてごらん」と言っても、子どもはなかなか筆を取ってくれないもの。子どもは“描きたい”と思った瞬間にスッと描ける環境があって、はじめて絵に向かうことができます。
そこでおすすめなのが、「いつでも描ける場所と道具」を身近に用意しておくこと。
たとえば、ダイニングテーブルの片隅に、コピー用紙と色鉛筆のセットを常備しておく。おしゃれな専用机や高価な画材は必要ありません。大切なのは“すぐ描ける”という気軽さです。
特に小さな子どもにとっては、「失敗してもいい紙」であることが大切。画用紙や高価なスケッチブックより、裏紙やコピー用紙のほうが気兼ねなく描けます。
水彩絵の具は準備と片付けが大変なので、すぐに使えて、あと片付けも楽な色鉛筆やクレヨンが◎。
「描きたい」と思ったその瞬間にすぐ描ける環境こそ、表現力を自然に伸ばしていく土壌になるのです。
“構造を感じる体験”が、観察力と表現力の基礎になる
絵が上手な人ほど、ものを“表面”だけでなく“内側”まで観察しています。たとえばミカンを描くとき、ただのオレンジの丸として描くか、房の凹凸や皮の厚みまで意識して描くかで、作品の奥行きがまったく違ってきます。
これは、大人だけの話ではありません。子どもでも、経験を通して「モノの構造」を知っていれば、それが自然と絵に表れてくるのです。
たとえば……
- ミカンの皮を自分でむいて食べる
- 魚をおろすときに骨の位置を見てみる
- 積み木やブロックを組み立てる
こういった日常の体験すべてが、観察力と表現力の基礎になります。
レオナルド・ダ・ヴィンチが人物画を描くために解剖図まで描いたように、“内側を知ること”がリアルな表現につながるのです。
絵画教室に行かなくても、日々の暮らしの中で「中身を意識する体験」をたくさん用意してあげることが、将来の豊かな表現につながっていきます。

少々の汚れは気にしない。のびのび描ける空気が才能を伸ばす
「テーブルが汚れるから気をつけてね」「服に絵の具がつかないように!」――つい言ってしまいがちですが、これが子どもの自由な表現のブレーキになっていることもあります。
絵を描くときには、多少の汚れや散らかりはつきもの。それを「いいよ、あとで一緒に片づけようね」と受け止めてあげるだけで、子どもは安心してのびのび描くことができます。
服が汚れるのが心配でエプロンを着せたくなる気持ちも分かりますが、タイミングによっては「今描きたい!」という集中力を断ち切ってしまうことも。
実際、筆者も白いブラウスで木炭デッサンをしてクリーニング屋さんに驚かれた経験があります。それでも“動きやすさ”や“心地よさ”を優先したほうが、集中力を保てたのです。
描くことに夢中になる環境をつくるには、“汚れてもOKな空気感”がいちばん大切です。
「みて!」の声には必ず応える。それが表現する喜びを育てる
子どもが絵を描き終えると、「みて!」と目を輝かせて見せてくることがありますよね。
そんなときは、どんなに忙しくても“その場で見る”ことをおすすめします。
なぜなら、「誰かに見てもらえた」という体験は、子どもにとって大きな励みになるからです。絵を描く意欲、表現したいという気持ちは、この小さな承認の積み重ねで育っていきます。
また、「うまいね」だけで終わらず、「この目がすごくやさしい感じ」「髪の毛の流れが本物みたい!」など、“どこがいいのか”を具体的に伝えてあげましょう。
表面的なお世辞よりも、ちゃんと見てくれたという実感が、次の作品への原動力になります。
実力に合わせたステップアップで、「もっと描きたい!」を育てよう
子どもの絵を伸ばすためには、“今の力に合ったサポート”をしてあげることも大切です。
たとえば……
- 小さなお子さんには、色鉛筆とクレヨンで十分。
- 小学生になったら、絵具やさまざまな素材を使ってみる。
- 中学生になったら、デジタル画に挑戦してみるのも◎。
また、「子ども 絵 変」と不安になるほど個性的な絵を描く子は、実はとても自由な発想を持っている証拠。その表現の幅を広げるためには、より高度なスキルや視点を持つ人との出会いが刺激になります。
子どもの興味やレベルに合わせて、アート教室やワークショップなど“外の世界”を用意してあげると、表現の可能性がぐんと広がります。
「家庭でできること」と「外で学べること」をバランスよく組み合わせていくことが、表現力を育てるうえで理想的な形です。
習わせるだけが正解じゃない。家庭の中にもアートの種はある
子どもの絵が上手になる道はひとつではありません。
絵画教室に通わせることももちろん素晴らしい選択肢ですが、家庭の中にも表現力を育てるヒントはたくさん転がっています。
- 自由に描ける環境を用意する
- モノの構造に触れる体験を増やす
- 汚れや失敗を気にしない空気をつくる
- 見せてくれた絵にちゃんと向き合う
- 興味や成長に合わせたサポートをする
こうした小さな工夫が、子どもの中にある“描きたい気持ち”を引き出してくれます。
まずは、「今日、描いてみる?」と笑顔で声をかけてみてください。 きっとそこから、世界にひとつだけの素敵なアートが生まれていくはずです。
おわりに
絵を上達させる方法は、考えながら絵を描くことです。
小手先のテクニックだけで絵がうまくなっても、すぐに限界がやってきます。
「考える力」「モノをみる力」は、家庭や生活の中で育てることができます。
大人も子どもと一緒になって身の回りにあるものを観察してみてはいかがでしょうか。
文筆:式部順子(しきべ じゅんこ) 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業 サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。 在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。