意外!? 美大生に聞いた「絵を好きになったきっかけ」とは

絵を好きな人には、好きになったきっかけがあります。
実は絵を好きになるきっかけは、とても身近なところにあるのです。

今回は、筆者が美大生時代に聞いた「絵を好きになったきっかけ」についてお話しします。

身近な人が絵を描いていたから

身近な人が頻繁に絵を描いていると、自然と絵を描くことが日常の一部になります。
自分の親が画家やデザイナーの人は、生まれたときから画材や作品が豊富にあり、絵を身近に感じることができます。

「身近な人」は家族だけではありません。
学校の美術の先生や友達も身近な人です。
学校の美術の先生や絵画教室の講師は、学校や教室以外ではひとりのアーティストとして活動していることがあります。

ふとしたときに、いつもの先生からは想像もできない作品を目にしたことが美術や絵に興味をもつきっかけになった人もいます。
友人は、よきライバルにもなる身近な人です。

しばしば「美大に行く人は親も美術の関係者でしょ」といわれることがあります。
たしかに生まれながら美術に恵まれている人もいますが、多くは自分できっかけをみつけた人たちです。

最近はコーヒーショップの看板や黒板アートなど、以前よりも絵を描く人は身近にたくさんいます。
視野を広げて周囲を見渡すだけでも、絵を好きになるきっかけはあるのです。

好きな絵本やアニメがステキだったから

アニメやマンガは日本の文化です。
絵を描くきっかけがアニメやマンガだった人はとてもたくさんいます。

アニメやマンガを描くためには、人物だけでなく建物や動物など幅広いモチーフを描く必要があります。
「好きこそものの上手なれ」という言葉通り、マンガを描く人はよりよい作品を描くために積極的に腕を磨くのです。

また一冊の絵本が絵を描くきっかけになっている人もいます。
絵本は、一番身近な画集です。

人気のある絵本すべてが「うまい絵」ではありません。
ブルーナの絵本のようにとてもシンプルな線だけで描かれた絵や数色だけで構成されている絵もあります。
絵本は、絵を身近に感じさせ「自分も絵が描きたい」と思うきっかけになるのです。

絵本やマンガは、自分で描いて楽しむだけでなく投稿する楽しさもあります。
絵本やマンガは画力以外も多くの要素が必要になるため幅広い観点から評価されるのです。
多少画力が足りなくても、ストーリーがおもしろければ高評価されることもあり、自分の作品に自信をもつことができます。
画力が足りなければ、画力はトレーニングすることで向上します。

自分の作品が褒められたから

絵を好きになったきっかけで一番多いものが「自分の作品が褒められたから」ではないでしょうか。
言い換えれば「自分の作品が認められたから」です。

自分が絵を描いたとき、家族や先生に褒められるとやる気がでます。
ただ褒められるだけでなく、自分の作品がコンクールで入賞すれば自信になり、継続する力になるのです。

「美大生は美術館が好き」と思う人が多いかもしれません。
しかし、美大生は美大に入学するまでは、それほど美術館に行っていない人も多いのです。

筆者もそうでした。
美術館に飾ってある作品よりも自分の作品のほうに興味があるのです。
美術館で有名な作品をみるよりも、自分の作品で展示会を開き、多くの人にみえてもらう方に興味がわきます。

つまり、絵を好きになったきっかけは、鑑賞よりも自ら描くことなのです。
「レオナルダ・ダ・ヴィンチの作品との出会いに衝撃を受けて絵が好きになった」という人は、鑑賞する立場として「好き」なのでしょう。

もしも、子どもを絵が好きな人にしたいと思うならば、美術館に行って有名な絵画をみせるよりも、自由な発想で絵を描かせてそれを認めることのほうが「好き」に近づくのではないでしょうか。

絵を好きになるきっかけをつかむポイント

何かを好きになるときには、好きになるものとの接点が必要です。
絵本やマンガは、誰もが出会える接点です。
学校の授業もみんなが経験します。

絵画教室は、絵を描く環境と人の両方の接点をもっています。
絵を好きになるきっかけは、身近に画家がいなくても、みんな同じようにあるのです。

大切なことは、接点をみつけた後の行動です。
せっかく絵を好きになるきっかけをみつけても、自分のこととして取り入れなければ「きっかけをつかむ」までたどり着くことができません。
自分で絵を描いたならば誰かにみてもらい、表に出すことが大切です。表に出すことが継続する力になります。

おわりに

紹介した以外にも絵を好きになったきっかけがゲームやお菓子のパッケージだった人もいました。
子どものころにやっていたゲームの背景やキャラクターに感動し、自分のイメージした空想世界を表現するために絵を描き続けている人もいました。
彼は美大卒業時に描き貯めた絵を大手ゲーム会社に持っていき就職が決まりました。
就職氷河期といわれる時代でしたが「好き」と思い続け描き続けたことが大きな結果を生んだのだと思います。

「きっかけ」は接点です。
点を線にする力はスキルではなく「好き」という気持ちではないでしょうか。

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ)
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。
在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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